薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
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何処のメーカーか知らないが、少なくともヒロトの香水ではないはずだ。
ヒロトは女物の香水なんて使わない筈(もしかしたらそういう趣味があって今まで気付かなかっただけなのかもしれないが)。
つまりヒロトは誰か女と会っていたと言うことだ。
誰かなんて検討が付かない。
だが嫌いじゃない匂いだった。
何の香りだ?
「よぉ、グラン。」
声を掛ければ俺とは違う赤が振り返った。
「珍しいね、バーンが話しかけてくるなんて。」
嫌味っぽく言われた言葉にちょっと苛ついた。
「何処に行ってたんだ?」
「別に、何処でもいいじゃないか。」
どうしてそんな事を聞く?と付け加えられた言葉にバーンは曖昧に返した。
「別に、ただ聞いてみただけだ。」
バーンは肩を竦めて見せた。
そんなバーンの様子をグランは怪訝そうに見詰めた。
ピーコックグリーンの瞳が鋭かった。
敵意だ。
それはつまりバーンに知られたくないような事をしているという裏付けだ。
「何を企んでいる。」
「何も企んでねェよ。」
グランは知っている。
バーンが肩を竦めるのは誤魔化し、何かを隠す時の癖だと。
グランの猜疑心はバーンから離れない。
知らぬ香り
(いつもと違う香りで睨んでくる君。)
(まるでおもちゃを取られたくない子供みたいだった。)
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