薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
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それを佐久間は不愉快そうに顔を歪めた。
「葵!手を出すなと言った筈だ!」
「私が有人を横取りしたと思っているんでしょう?ファーストネームで呼び合っている私が妬ましいんでしょう?力がある私をぶちのめしたいんでしょう?』
葵は佐久間に言った。
まるで自慢しているかのような態度が佐久間の癪に障る。
「うるさい!」
佐久間が蹴ったボールが葵へと向かう。
葵がボールを受け止めようと手を出すより速く、円堂が動いた。
円堂が葵の代わりにボールを受け止めた。
「影山に従っているような奴等に俺達のサッカーなんて言わせない!!俺は今まで勝ち負けとかじゃなくて楽しければいいと思ってきた。だけど今回は、絶対に勝つ!俺達のサッカーを見せてやる!!」
円堂の瞳に確かな覚悟を見た。
葵もまた円堂の瞳を見て、憎しみを背負う覚悟...いや、それだと少し語弊が生まれる。
葵はそんな他人の憎しみを背負う程に出来た人間ではない。
そんなのは主人公のする事だ。
主人公は私じゃなくて円堂君なんだから。
そうやって私は他人に干渉する事を避けてきた。
私はただ彼らの憎しみを認め、許す事しか出来ない。
認め、許す事なんて背負うよりもずっと楽な方法なんだから。
責任と覚悟
(君達の憎しみを認めるよ。)
(そして私は君達の罪を許すよ。)
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