薔薇の秘め事

□薔薇の秘め事
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「最初は影山の為に葵に近付いたが、なかなかものに出来なかった。影山は分かっていたのだろうな...俺が連れ戻せない事も、葵がそう簡単に戻って来るわけない事も。」



それほどまでに葵の意志は強かったのだ。



それを影山はよく理解していた。



それが悔しかった。



影山より自分の方が葵を知っている、理解していると思って生きてきたのだから。



葵が男だと知った時正直驚いたが、それ程ショックではなかった。



葵が男だと知っている自分だけが特別だと、自分だけが弱みを知っていると錯覚しまい、依存してしまった。



くだらない独占欲に支配欲。



鬼道は葵にゆっくりと顔を向けた。



「お前が好きだ、葵。」



ゴーグル越しの赤い双眸の瞳と葵の紫水晶の双眸の瞳が合う。



真っ直ぐな瞳に後ろめたさを感じた。



有人は私が豪炎寺修也が好きだと知っていて言っているのだから。



『私一応男だけど?』



一応私が男だと言うことを忘れてないか確かめる。



所謂言い訳で言い逃れだ。



「知っている。」



鬼道からは短い返事が返ってくる。



『私佐久間君に殺されちゃうかも。』



また一つ理由を探す。



他人を理由に使うのは最低だと分かっている。






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