薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
2ページ/4ページ
『3日前怪我して、途中サッカーやったりした。あんなのいつもなら1日で治った筈なのにね。今はもう殆ど痛みはない。ただ治りが遅いから思っていたよりも酷いかもと思って。』
葵と先生の仲に他人行儀の愛想笑いは必要ない。
勿論皮肉も言いまくる。
先生はキーボードを指で打ち、画面に文字を入力する。
入力する文字の羅列は私の事だ。
「回復力が下がったみたいだね。疲労の所為で治りが遅くなっている。それに悩み事もよくない、ストレスになっている。」
先生は葵に向き直り、言った。
先生の口からはすらすらと言葉が出てくる。
まるで母親の説教みたいだ。
そしてどこかセラピーのようだった。
『まるで心を読んだみたいね。』
葵は椅子に深く座り直した。
「何を悩んでいるんだい?」
先生は言う。
『うわ、直球ですね。』
葵は胸の前で腕を組んだ。
腕を胸の前で組んだりするのは隠したい事があるからだ。
先生はそれを見て口を開いた。
「悩んでいるんだね?」
『...かまかけたんですか、酷い人。』
医者の癖にと内心毒吐く。
「人は嘘を吐く。いつも正直でいてもらわないと正しい治療が出来ないからね。」
先生の言っている事も分からなくはないが、それがかまをかける事が葵との間に必要かどうかは謎だ。
.