刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「涙、...っ、」
名前を呼ばれ、頬を強く叩かれ、私はハッと意識を取り戻した。
涙は自分の行いに驚き、パッと鬼道の首を絞める手を放した。
「ぁ...」
目の前で鬼道が首に手をあて、咳き込んでいた。
涙は5秒前に鬼道の首を絞めていた自分の両手を見下ろしていた。
「涙...、」
荒い呼吸に混じって名前を呼ぶ声が聞こえた。
ビクリと身体が震える。
「涙、大丈夫か?」
涙は鬼道の言葉に顔をパッと上げた。
空色の双眸が驚きを映していた。
「私の心配なんかしなくていいのに...ごめん、ごめんね」
涙は嗚咽を漏らし、涙を流した。
「お前に何度も殺されかけたから平気だ」
鬼道はゆっくりと涙に手を伸ばした。
涙は小さく震えたものの、拒むことはしなかった。
大人しく鬼道の腕の中にいた。
「ごめんなさい、」
涙は咽び泣いた。
「いい、何も言うな」
少しだけ鬼道は腕の中の涙を抱き締める力を強くした。
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