刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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冗談混じりに言ってやれば魅麗は少し驚いた顔をした。


「そういう冗談もいえるんだぁ...」


そして魅麗は手に持っていた物を涙に見せた。


「これなーんだ?」


筒状のプラスチックのケースに沢山の粒が入っている。


それを涙は見たことがある。


涙の所有物だ。


「とっても見覚えがあるね」


「うん、佐倉君のだからね」


魅麗はプラスチックケースを軽く振った。


中の粒がカラカラと音を立てる。


「それをどうする気?」


「これないと困るんじゃないかなぁと思ってね...返して欲しかったら昨日の事謝って、魅麗と付き合って、キスして...」


またこの女のワガママか。


「返して、岩瀬さん」


「返したら魅麗の事なんて見てもくれないでしょ!?」


「僕はいつも君を見ていたよ」


これは事実だ。


そこに愛なんてないけどね。


「じゃあなんで魅麗と付き合ってくれないの!?」


愛してなんかいないからに決まっているなんて言えばまたなんか問題が起こる。




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