刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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不快な気分で部屋に入れば涙は制服を脱ぎ捨て、濡らしたタオルで傷口を押さえていた。
涙だって制服を脱げば普通の女の身体を持っている。
目の前に好きな女が上半身裸でいたら欲情しない男はいない。
涙の回りには赤くなっったタオルが何枚も落ちていた。
ゆっくりと首だけをこちらに向けた涙。
偽りの蘇芳色の瞳と目が合う。
カラコンなんてつけなくても美しい空色の瞳があるのに。
変装なのだから仕方ないが。
「後でちゃんと洗うからそんな顔しないでよ」
「...手伝おうか?」
鬼道は涙のすぐ傍に座った。
涙はサッと腕で胸を隠した。
「今更恥ずかしがってどうするんだ」
呆れたような声がすぐ傍で聞こえた。
「うっ、うるさい!」
涙が鬼道を睨み付けようと見れば、思ったよりも顔が近くて。
鬼道は自覚しているか知らないが、とても悲しそうな、苦しそうな顔をしていた。
「なんて顔してんの。らしくないよ?」
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