刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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鬼道からは返答はない。


「そうやってなんでもかんでも自分の所為みたいな顔して...それで満足?」


涙はアステリスクから渡された(奪い取った)箱から包帯とテープ、そして何故かサランラップを取り出した。


「ラップなんて何に使う気だ?」


何故ラップについて話すクセに自分の言葉は聞いてないフリなんかして、なんて思うも口に出したりしない。


「傷口を覆うの」


傷口を覆うと聞いて鬼道は驚いた。


「ガーゼじゃないのか?」


「ガーゼだと傷に貼り付いて何度もかさぶたを剥がして痛い目に遭うけど?それに傷口は湿っていた方が効果的に治るの。かさぶたはよくないのよ」


そんな事も知らないの?なんてドヤ顔で言ってやれば、自分の頭が鬼動に勝ったような気分になってちょっと誇らしい。



優越感に浸りながら涙は鬼道にハサミとサランラップ、テープを渡した。


鬼道は涙の背後に座り直し、作業を開始した。


「ホントは俺への当て付けじゃないのか?」


「は?」


涙は鬼道の言葉にマヌケな声を漏らした。


「俺に傷を見えるようにして責めているようにしか見えない」


まさか鬼道がそんな風に考えているなんて思わなかった。


いや、思いつかなかった。


「...そう見えるなら謝るよ」







責め立てる傷口



(嫌でも目につく傷口が俺を責め立てる。)


(無力だと、非力だと、脆弱だと。)








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