刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「これでいいか?」
「うん、後は自分で出来るよ」
涙はラップとハサミを持ち、切ろうとするがこれがなかなかうまくいかない。
どうも静電気かなんかの所為でラップが広げられない。
「出来ないクセに強がるからそうなるんだ」
鬼道は涙からそれを奪い、再び作業を開始した。
涙は俯いた。
「情けないね...」
「それは守りたい女に守られている俺の事か」
「そういうのを自意識過剰っていうんだよ。私が言ってるのはたかが傷の手当てを一人で出来ない私だよ」
涙は苦笑した。
鬼道は改めて涙を真っ正面から見、傷口にラップをテープで貼った。
涙は鬼道から身体を反らし、箱から包帯を出した。
包帯を巻こうとするが、胸を隠しながらでは出来ない。
「あの、さ...」
「なんだ?」
「して…」
そう言った涙に鬼道はキスをした。
「な、何!?」
「今セックスするのは傷に響くからこれで我慢して欲しい」
「違っ!バカ!包帯もして欲しいの!勘違いしないでよバカ!」
涙は巻きかけの包帯を押し付けるように渡した。
「バカはないだろう、しかも二度も」
「う、うるさい!」
後ろから抱き締める様に回された腕。
それも包帯を巻くためだから仕方がない。
ちょっとした羞恥に耐え、涙は目をつむった。
「終わった」
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