刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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あまりにも嫌悪するような、責め立てるような、そんな表情。
「鬼道といると苦しいよ」
涙は俯いた。
ああ、苦しいさ。
苦しいとも。
そして今までずっと否定し続けてきたが、肯定しよう。
彼が、好きだ。
自分を偽ることは簡単だが、素直になるのはずっと難しい。
その分彼が素直なのだが。
だが気持ちだけじゃどうしようもないのだ。
学校という小さな法律から私は解放されない限り、男女交際など許される事はないのだ。
許嫁とかなら別だが。
涙は唇を噛んだ。
「なら、離れるべきかもな」
「え?」
今なんて...?
「さよならのキスだ」
触れるだけのキス。
優しくて、儚くて、切ない、初恋みたいなキス。
「すまない」
鬼道はそれだけ言うと部屋から出て行った。
鬼道はバカじゃない、大馬鹿者だ。
こんなのってない、あんまりだ。
さよならのキス
(好きなのに、)
(さよならなんて。)
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