刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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誰が好き好んで両親の敵に目を見て許すと言わなければならないんだ。
視界に入るだけで不愉快だ。
涙は目を反らした。
「勘違いしないでよね。いじめを許しても両親を殺した事は許さないから」
涙は魅麗の耳元に唇を寄せ、マイクをオフにして言った。
魅麗は目を見開き、息をのんだ。
見開かれた目に涙を溜め、ついには声をあげて泣き出した。
「ごめん、なさい...」
「どうして貴方が泣くの...!?」
涙は口元を押さえ、口から漏れようとする声を落ち着かせようとする。
耐えようとすれば今度は逆に苦しくなってきて涙が浮かぶ。
涙は耐えきれなくなり、魅麗に背を向け早歩きで離れていった。
見かねて鬼道も涙の後を追う。
涙は屋上の柵に背を預け、座り込んでいた。
「涙?」
鬼道に声をかけられ、涙は顔を上げずに震えだした。
「大丈夫か」
鬼道は直ぐに涙の傍に膝をついて涙の顔を覗き込もうとした。
「...ふふっ!んふふふふふ!」
耐えきれなくなり涙は顔を上げて大笑い。
「あはははははっ!!」
突然笑い出す涙に鬼道は驚き、気が可笑しくなったのかと思った。
「大丈夫か?」
同じ言葉を繰り返し問うが、今度は違う意味だ。
怪訝そうに涙を見詰めるが、涙の笑いは止まらない。
「だってさだってさぁ!あの岩瀬の顔見た!?絶望を前にした顔!自分の立場が悪くなると急に泣き出してさ!泣きたいのはこっちなのに!もう笑っちゃう!!ルックス以外に取り柄ないのあの子!?」
笑っている所為かいつもより大きな声とオーバーなリアクション、そして勢い余って普段なら言わないような事も言ってしまう。
感情の高ぶり、コントロール不能。
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