狂愛
□狂愛
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妹は医者達の早い対処のお陰で一命は取り留めた。
しかしあれから三日。
妹は未だに目を覚まさない。
見舞い品の花が視界の隅でちらつく。
まるで自分の存在を主張するように淡い紫の花が咲き誇っていた。
花の名は牡丹。
妹が一番好きな花だ。
花言葉はたしか"王者の風格"・"富貴"・"壮麗"・"恥じらい"・"誠実"...。
一般的に"百花の王"と呼ばれる事がある。
でも君には"百花の姫"の方が似合っているよ。
小さな手両手で、妹の右手をギュッと握った。
早く目を覚まして。
僕に謝らせて。
じゃないと僕は僕が嫌いになってしまいそうだよ。
妹の細く青白い腕に点滴の針が刺さっていた。
それが妙に痛々しくて、僕は目を伏せた。
『お兄ぃ、ちゃん...?』
その声は三日前に倒れた妹の声だった。
妹が目を覚ましたのだ。
「ぁ...。」
いざ対面すると何と声をかけていいのか分らなかった。
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