狂愛
□狂愛
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あれから数年経った。
僕は中学二年生になっていた。
多くの事を時間が変えていく。
そんな中、僕ににとって変わらない事が一つだけあった。
妹だ。
妹は何も変わらない。
花が綻ぶ様な笑顔も、同じ金色の長い髪も、
穢れを知らない無垢な緋色の瞳も何もかも。
妹は何も変わらなかった。
それが妙に羨ましかった。
僕も妹と一緒で何も変わらなければいいなと。
ずっと一緒に。
全てを共有出来たらいいなと。
でも一つだけ変わった事がある。
妹の体調が段々よくなってきているんだ。
運動は流石にダメだけど、歩き回る程度なら平気になったんだ。
『お兄ちゃん、私サッカーしているお兄ちゃんが好きだよ。』
そう言って妹は花が綻ぶ様な笑みを浮かべた。
まるで満開の牡丹の花の様だった。
不変の無垢
(僕はその匂いに酔った。)
(不意にある筈のない牡丹の匂いがしたんだ。)
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