狂愛
□狂愛
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『ねぇ、お兄ちゃん。私の最期のお願い聞いてくれる?』
妹は病院のベッドの上で唐突に口を開いた。
「うん。」
僕は妹の口から出た"最後"という単語に、改めて妹の死期を悟った。
お見舞いの花瓶に薄紅色の牡丹が悲しげに咲いていた。
花弁が風に揺らされてポトリと花弁を一枚落とした。
『私と結婚して。』
"結婚して"。
「今、なんて...?」
僕は耳を疑った。
『私、お兄ちゃんを愛してる。家族としても、一人の男性としても...。』
そう言った妹の表情は真剣そのもので。
ああ、僕の恋は一方通行ではないみたいだ。
それがどうしようもなく嬉しかった。
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