血3題
□隠した手首
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俺はどうしようもなく汚れている。
翔太はいつもそう思っている。
恋人である男が綺麗であるから、余計にそう思う。
新宿歌舞伎町にあるクラブ「エメラルド」。
ここが翔太の現在の職場であり、いわゆるホストクラブだ。
ここに居ついてもう2年にもなることが信じられない。
気まぐれで飽きっぽい翔太が、こんなに長く1つの店にいられるのは理由がある。
当初の理由は、この店が珍しく男性もOKの店だからだ。
通常ホストクラブの客は女性であり、男性は入れない店がほとんどだ。
この店は毎日ではないが、男性客も入れる日を設けている。
それに月1度だけ男性客しか入れない日もあったりする。
どうやら生まれついての性格で、翔太は女には興味がない。
惚れるのは男ばかり。
だから男性客も受け入れるホストクラブを転々としていた。
トラブルは絶えなかった。
止せばいいのに、同僚ホストや客の男に惚れてしまう。
若い頃は気になる男には躊躇せずに言い寄った。
同じ性癖の同僚ホストと客の取り合いをしたこともある。
逆に言い寄られて好きでもない男と関係を持って、付きまとわれたり逆恨みされたりもした。
相手の男が両刀で、女と恋敵になったりするともう最悪だ。
アイツらは女であるだけで、まるで自分の方が優れているような顔をする。
トラブルメーカーと呼ばれ、あちこちの店を追い出されて。
そんな翔太を拾ってくれたのが、クラブ「エメラルド」の店長、横澤だった。
うちの店では、身体で客を取り合うような真似はするな。
行き場のない翔太は、横澤のこの条件を飲むしかなかった。
そして翔太はクラブ「エメラルド」で、雪名と出逢った。
雪名が初めてこの店に出勤したその日、翔太は雪名に恋をした。
どういうわけか雪名も翔太が好きだと言ってくれて、2人は恋人同士になった。
翔太が今ここにいる理由は、このキラキラした王子様のような恋人の存在に他ならない。