SMILE5
□困ったように
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困ったように笑う表情が、かわいらしい。
でもそれこそが最大の武器だってこと、気付いてないのかな?
「小野寺君、ちょっといいかな?」
「あ、長谷川さん」
とある日の丸川書店、エメラルド編集部。
そのとき席にいたのは、美濃奏と小野寺律の2人だった。
他の編集部員たちは打ち合わせや会議で席を外している。
「何か久しぶりですね。」
律がそう言って、軽く会釈をした。
美濃はそんな2人など気にしない素振りで、パソコンに向かっている。
だが美濃は気付いていた。
長谷川は昨日から何回か、エメラルド編集部に来ている。
そして物陰からこちらの様子をうかがっている。
おそらく高野がおらず、律だけがいるタイミングを計っているのだろう。
美濃はそう思った。
以前、彼が律を飲みに行こうと誘ったとき、高野が横からことわったせいだと思う。
長谷川はきっと、高野に邪魔されずに律と話をしたいのだ。
案の定、高野がいないと見るや、長谷川は律に駆け寄ってきた。