SMILE5-2

□爆笑
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丸川書店の正面玄関で、立ち話をしている2人の男がいた。
2人も力が抜けてリラックスした表情であることから、親密な関係なのだとわかる。
不意に1人の男が、もう片方の男の耳元に唇を寄せて、何事かを囁いた。
何か面白い冗談でも言ったのだろう。
言われた方の男が、笑い出した。
大の大人がここまで笑うかと思えるほどの爆笑だ。
彼を笑わせた男が、爆笑する男の肩をポンポンと叩いた。
あまりにも笑う彼を宥めようとしているのだろう。
そんな2人の様子を目にした小野寺律は、こっそりと心の中でため息をついた。

2人のうちの1人、爆笑した男の名は高野政宗。
律の上司であり、隣人であり、今は恋人でもある。
もう1人の名は、営業部の暴れグマこと横澤隆史。
高野の親友であり、かつて高野に恋愛感情を抱いていた男だ。
一時期は律を含めて、いわゆる三角関係にあった。
その頃の横澤は律を邪魔者と見なして、律につらく当たるばかりだった。
だが今は高野と律のことを認めてくれている。
律とは普通に会社の同僚、高野とは友人として、良好な関係だ。

でも律は、横澤がうらやましいと思う。
高野は律と2人の時、あんな風には笑わない。
仕事中、例えば律が何かミスをしたときなどに爆笑することはある。
だがそれは決して律を蔑んでしていることではない。
負けん気の強い律を煽って、やる気を起こさせるため。
つまりわざとだ。
律が仕事以外の話をしても、高野があんな風に笑うことはない。
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