SMILE5-2

□目が笑ってない
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「ちょっと律っちゃん!大丈夫?」
「すみません!もう俺、何やってるんでしょうね。。。」
本棚に資料を戻そうとしていた律の手から、数冊のファイルが落ちた。
バサバサと落下する音に驚いた木佐が、律に声をかける。
律は「アハハ」と乾いた笑いを浮かべて、誤魔化そうとしている。
だが目が笑っていない。
高野は最近の律はどこかおかしいと思っている。

律が「好きだ」と告白してくれたとき、高野はようやく取り戻せたと思った。
かわいい恋人を。そして10年間という失われた時を。
そして同時に楽しみでもあったのだ。
高野に対していつもつんけんと、とんがっていた律がどう変わるのか。
10年前と同じとまではいかなくても、少しは素直になるのか。
いやまったく変わらなくても、それはそれでいい。
どっちの律もきっとかわいい。
だが律は高野の予想とは違う変化を見せた。

律は笑わなくなった。
何かあれば口元を綻ばせて、笑みを浮かべることはする。
だがその目は笑っていない。
どこか迷うような、すがるような。
高野が愛する大きな瞳が、弱々しく揺れている。
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