SMILE5-2

□怒りのあまり
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「高野さん?どうしたんですか?」
最初は不機嫌そうな顔をしていた律だったが、高野の表情を見て驚いている。
いや、怯えているというべきかもしれない。
高野は怒っていた。
怒りのあまり、表情を取り繕うこともできないほどに。

今日も高野は仕事が立て込んでしまい、深夜の遅い帰宅になった。
律は先に帰宅している。
高野が自宅マンションに帰り着き、向かったのは自分の部屋ではなく律の部屋だった。
ドアチャイムを何度も鳴らすが、応答はない。
もう眠ってしまっているのかもしれない。
高野は携帯電話を取り出すと、律の番号をコールした。

「何ですか?」
案の上、随分待たされた後出て来た律は、完全に寝惚け眼だった。
そしてこの深夜の無礼に対して、不機嫌そうだ。
寝入りばなに叩き起こされたのだから、無理もないと言えば無理もない。
普段の高野だったら、ここまで強引に寝ている律を起こすようなことはしない。
だが今日は何としても、律と話をしなければならないと思った。

「高野さん?どうしたんですか?」
最初は完全に寝惚けていた律も、高野の顔を見て一気に覚醒したようだ。
高野にも怖い顔をしてしまっているのだという自覚はある。
だが高野には、表情を取り繕う余裕などなかった。
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