SMILE5-2

□満面の笑み
1ページ/5ページ

「本当にごめんね。律っちゃん。」
「そんな、杏ちゃん。全然気にしてないから。」
2人の間に漂うのは、穏やかで優しい空気だ。
兄妹のように育った幼なじみ。
いろいろあったけど、またこんな風に話せるのは嬉しいことだと思う。

ここは丸川書店から程近いカフェだった。
仕事を終えて会社を出た律は、杏と向かい合っていた。
ずっと着信拒否にしていた杏の番号とアドレス。
拒否設定を解除した途端に、杏から「会いたい」とメールが来たのだ。
誘いに応じて、律は久しぶりに杏と会うことにした。

今までは杏との縁をきっぱりと断ち切るつもりだった。
それが高野に対する誠実さだと思っていたからだ。
だが今は違う。
杏と会ったり話をしたくらいで、律と高野の関係が揺らぐことはない。
高野と横澤が親しく話をしても、今さら傷ついたりしないのと同じことだ。
今の律は高野を信頼しているし、高野も律を信じてくれていると思えるのだ。

それに杏ももう律のことを、完全に幼なじみと割り切ってくれていた。
昔のように明るい笑顔で接してくれる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ