「わたしがいなくなったら淋しいでしょう」
そう言って笑う先輩の表情はどこか嬉しそうで、おれの反応を楽しんでいるようだった。内心すごくさみしいと思っているのに、口先では「別に」と低いトーンを響かせる。それさえも見透かされて、「圭介は素直じゃないね」とからかわれる。先輩の表情は嬉々としていて、まあからかわれたってこの顔がみれるんなら、なんて思っているおれは相当重症、なのかもしれない。
現実かそうじゃないのかわからないほど浮ついた状況の中、先輩の肩越しに見える、黒板の"卒業まであと10日"という落書きが、やけに色濃く存在感を放っていた。
青い春が過ぎていく