BREATHE

□青い春が過ぎていく
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「圭介、」


靴を履き替え昇降口から上がった瞬間、聞きなれた声が鼓膜を震わす。振り返ると期待した姿を真っ先に捉える事が出来た。なんでそんなに嬉しそうなんだというくらいに、朝から明るく潤った顔をしている先輩。続いてもらった「おはよう」の挨拶に、「オハヨウゴザイマス」と図らずも片言のようになってしまった返事をすると、先輩は心底おかしそうに笑った。
そんな姿を見ていても頭の中では、嫌でも夢の中の先輩を思い出すのだ。「ばいばい」と、さらりと言ってのける先輩を。


「どうしたの、圭介。元気ないね」

「そうすか?」

「うん。なんか顔が死んでる」

「ええ、」


思わず頬に手を当てる。死んでる、か。まあ、今朝一度死んだといっても過言ではないけれど。でも、いつもと変わらない先輩の姿に安心している自分がここにいた。「紘奈!」、先輩の向こう側から聞こえる、先輩を呼ぶ声。おれが呼ぼうとして、喉からこぼれかけて、でも何度も呑み込んできた名前。名前を聞いただけで熱がかっと上がる感覚がするなんて、めでたいやつだと自分を皮肉る。顔を上げると、先輩とよく一緒にいる女子生徒が手を振っていた。
 
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