企画

□ロボットにも心を
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綱吉が雲雀のところに来てから半月が経った

「君はいまひとつ進歩しないよね」

ため息と共に雲雀は綱吉の隣に倒れている本棚を見つめる

「す、すみません…」

綱吉は身を小さくする

「言っただろ?重たい物を動かして掃除をしなくていいって…もし君に倒れたりしたらどうするんだい?」

雲雀は倒れた本棚の周りに落ちている本を拾う
最後の言葉に綱吉は嬉しそうな顔をして

「雲雀さん…はい、すみません。これからは出来るところだけします!」

そう宣言する

「そうしてくれると助かるよ」

雲雀はそっと笑いかける





初めは綱吉を拒絶していた雲雀
だが、綱吉のダメっぷりに呆れて笑ってしまい
一緒に掃除をしている時に

『そんなバカだったら誰も欲しがらないでしょ。仕方ないからこのまま僕のところに置いててあげるよ』

と、なんとも上から目線な言葉に綱吉は笑っててそれにつられて雲雀も笑った

それからどんどん時間が過ぎていってもう半月だ

そろそろディーノに報告しなくてはならない時期が来た

「雲雀さん」

本棚を片付ける手を止めて名前を呼ぶ

「何?」

雲雀もそれにつられて手を止めて訊く

「今日は今までの報告をかねてメンテナンスをしに会社に戻ります」

そういうと、心配そうな顔で綱吉の方を見ると、胸の中心に触れて

「どこか壊れたの?」

そう訊いてきた
自然に雲雀は触れているのだろうが突然触れられたことに綱吉は驚く

「いえ!壊れてません。ただ報告と念のためのメンテナンスをするだけです」

真っ赤に顔を赤くした綱吉は雲雀から一歩離れる

「そう、君はいつも無茶ばかりするからね。どこか壊れてしまったのかと思ったよ」

ふと笑みをこぼす雲雀に綱吉の胸は高鳴る
その高鳴りの意味をまだ綱吉は分からない



「そういえば、メンテナンスで異常があった場合どうなるの?」

また本を拾い始めた雲雀が聞いてくる
綱吉はうーんと考えて

「そうですね。一時期会社に修理のため保管されるか取り返しがつかなかったら………処分?」

バサバサッドサッ

本が落ちる音を聞き隣を見ると
雲雀が持っていたはずの本が落ちていて
視界が急に暗くなる

「……いやだ…」

小さく聞こえた声
その声で今綱吉は雲雀に抱き締められていることがわかった

「ひ、雲雀さん!?」

抱き締められるなか綱吉はわたわたと慌てる

「戻ってこないなんて許さないよ」

ギュウッと強く抱き締める腕に綱吉はただ背中をさすって

「大丈夫です…ちゃんとここに戻ってきますよ。だって今のオレの家はここですから」

と、答えると雲雀は力を込めていた腕を弱め綱吉を自分の体から離す

「そうだね…あ、そこで少し待ってて」

雲雀は思い出したように言葉を言うと部屋から出た

綱吉は大人しく座ると胸を押さえる

ドキドキ
ドクンドクン

胸が鳴っている
今まで普通に触れ合っていたのに今はただ瞬間的に触れれば胸がなってしまう

自分は人間だ
壊れたりなんだりする訳ではない

では、なんだ?

うーん、と考え込む綱吉の後ろから

「綱吉」

と、雲雀の呼ぶ声が聞こえ振り向くとそこには雲雀と小さな指輪が

「その指輪…どうしたんですか?」

「小さい頃にね祭りの出店で買ったものだよ…誰かのために買ったんだけど、今じゃそれが誰か分からなくてね…」

「そうですか…」

綱吉の声音は少し低くなる

その指輪をもらえたはずだった誰かに綱吉は嫉妬したのだ

「まぁ、思い出があるものだからね…これ、君に預けるから。必ず返しにこの家に戻ってきてよ」

その指輪をチェーンに通して綱吉にそっと渡す

「今では、その昔の誰かより君の方が大切だけどね」

雲雀がそう呟いた一言に綱吉は嬉しくなる

「……必ず戻ります!!この指輪と一緒に」

綱吉の宣言に満足したのか『うん』と頷いて、本棚を片付け始めた



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