紫
□重ねた想いと言葉と手と… 《前編》
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いつものように休憩を邵可のいる府庫で過ごした劉輝は、真面目に書類と向き合っている。
それは珍しく、執務が終了する少し前まで続いた。
「しゅーえー」
黙々と動かしていた手をとめた劉輝は、楸瑛の名前を呼んだ。
「…はい?」
読んでいた書物から顔を上げて、劉輝の方に目を向ける。
「…ちょっといいか」
「どうしました、わからないことでもありますか?」
「いや、仕事は終わらせた!」
自信満々な態度は、凄いだろう、と言わんばかりだった。
「余はな、楸瑛に聞きたいことがたくさんあるのだ」
劉輝は自分の机案から離れると、楸瑛の隣にある椅子に座った。
「…何ですか?」
少々嫌な予感がした。
でも劉輝の仕事は終わったようだし、吏部へ行っている絳攸が戻ってきても問題はないと判断する。
「元気か?」
「…はい、体調はとてもいいですよ」
答えてはみたものの、質問の意図がわからない。だから楸瑛は劉輝の意図を探ろうとした。
「では次。昨日の夜は、ちゃんと眠ったか?」
「眠りましたよ。昨日は早く帰れましたからね」
「次だ。絳攸とは上手くいっているか?」
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