Infinite Stratos:Re

□第一夜
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「謎だ」



 今年で高校三年生になる俺、碧海涼夜は小さく呟いた。



「──それでは皆さん、一年間よろしくお願いします」



 謎だった。
 それは別に副担が教室に入って行ったときに何もない場所で転ぶ、のんびりした女だからではない。
 ちらっとクラスの表記されたプレートを見る。
 ……一年一組。
 今年三年生になるはずの俺が違う学校に、それも一年を最初からやり直す。
 これ、なんて苛め?


「えっと……こ、これから自己紹介をしてもらいますが、その前に皆さんのもう1人のクラスメートを紹介します。どうぞ、入って下さーい」


 教室から聞こえた声に、俺はドアに手をかけたが、その格好で止まる。
 切実に帰りたかった。


「あ、あれ? 碧海くーん、碧海涼夜くーん!」


(ヤバい……か?)


 副担の声からして涙目で自分を呼んでいるのが判った。
 ……意を決して、本当に腹を括ってドアを開けた。


「あっ、碧海くん! 良かった、ちゃんと聞こえてたんですね!!」


 俺が入って来たことで、ほっと安堵している副担。
 だが、突き刺さるように感じる視線を浴びているので副担を気にする余裕はない。


「それじゃあ碧海くん。自己紹介お願いしますね」


 そんな状態の俺を気にせず副担はそう言ってくる。
 恐らくは、こちらの心境には気付いていない。


「……碧海涼夜だ。……よろしく」



 少しだけ笑顔で言う努力をして言った。
 果たして自分は笑えているのだろうかと心配になる。
 何故なら回りの空気がおかしい。
 あんぐりと口をだらしなく開けている人もいる。
 俺の自己紹介はそんなに不味かったのか? そんな風に思っていると、漸く生徒の一人が口を開く。


「お、男……?」


「は、はい。あっ! それと碧海涼夜くんは今年で十八才の年上ですが、気にせず話しかけてあげてくださいね」


 それは貴女が言うことじゃない、と脳内で突っ込む。


「先生」


「あっ、はい! 何ですか?」


「外に表示されたクラス分け表や配られたプリントにもその人の名前は書かれてなかったんですけど……。それどころかテレビで話題にもなってませんよね?」


 一人の女子が手を上げながら質問する。



「それはですね。碧海くんはつい最近、十日程前ににISを使えることが発覚し、ここ“IS学園”に転入が決まったのが約三日前です。だから、既に仕上がっていたそれらを直すことができなかったんです。それから、公には今日公表されるので、皆さんが知らないのも無理はありません」


 どうやら色々と迷惑をかけてしまったようだ。


「では碧海くん。あそこの空いている席に座って下さい」


 副担の言う通り空いている席に向かう。
 窓側の、しかも一番後ろと言う良い席だ。
 どうやら仮にも転校生というのが項をなしたようだ。



「えっと、では出席番号順で自己紹介をお願いしますね」



 席に着いた俺は自己紹介をしている人と逆の方向、窓の方向へと視線を向ける。
 何でこうなるかなァ……。
 何で一年からやり直し、しかも女性しかいない学園に転入することになるのか。十日前、正確には十一日前の自分を恨んだ。







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