Infinite Stratos:Re

□第五夜
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 五月。
 鈴が俺の部屋に泊まり数週間たったが、鈴は一夏と仲直りしていないらしい。
 一夏曰く。



「会おうとしても避けられてて……」



 鈴曰く。



「ふん! あっちから謝りに来なきゃ話さないわ! はあ? 行っているけど、アタシが避けてる? ふざけんじゃないわよ、あのバカ!」



 なんだこれ……。
 それに何で俺がこんな仲介役になっているんだろうか。年長者だからか?



「一夏、来週からいよいよクラス対抗戦が始まるぞ。アリーナは試合用の設定に調整されるから、実質特訓は今日で最後だな」



 今日もまた一夏の特訓のため第三アリーナへと向かっている。
 メンバーはいつも通り一夏、箒、セシリアと俺。



「IS操縦もようやく様になってきたな。今度こそ──」



「まあ、わたくしと涼夜さんが訓練に付き合っているんですもの。このくらいはできて当然、できない方が不自然というものですわ」



「ふん。中距離射撃型の戦闘法〈メソッド〉が役に立つものか。まあ、確かに涼夜は役に立ってはいるが。……そもそも、一夏のISには射撃装備がない」



 正論だな。一夏のIS『白式』には射撃装備が一切ない。
 結局、近接ブレード一本というのが一夏のISのスペックだ。
 白式の装備『雪片弐型』は確かに強烈だが、かなり厳しいものがある。
 なにより燃費が悪すぎる。



「それを言うなら篠ノ之さんの剣術訓練だって同じでしょう。ISを使用しない訓練なんて、時間の無駄ですわ」



「な、何を言うか! 剣の道はすなわち見(けん)という言葉を知らぬのか。見とはすべての基本において──」



「涼夜さん、今日の一夏さんの特訓は昨日の無反動旋回〈ゼロリアクトターン〉のおさらいから始めましょう」



「ええい、このっ──聞け、一夏、涼夜!」



「俺は聞いてるって!」



「……。とりあえず落ち着け」



 何故に俺まで。
 ここでまた喧嘩されても困るため、二人を落ち着かせる行動に移る。



「涼夜さん! この際ですから言ってやってください。剣術訓練は時間の無駄だと」



「な、なんだと! それなら、涼夜! こいつに射撃装備のない一夏に中距離射撃型の戦闘法は無意味だと!」



 二人は睨み合って、今にも乱闘になりそうだ。
 俺はパンパン! と手を打つ。



「落ち着け」



 少し低い声で言う。



「結論から言うが、箒の剣道は一夏のIS戦闘で応用できる。セシリアは知らないかもしれんが、さっき言っていた『見(けん)』も役立つ」



「ふっ」



「ううっ」



 箒がどうだ、と得意げに薄ら笑いを浮かべる。
 対してセシリアは悔しそうに箒を睨む。



「で、セシリアの中距離射撃型の戦闘法だって習っておいて損はない。知っていると知らないでは全然違うからな。それに知識はあるだけあった方がいい」



 スポーツの試合でも相手の分析をする、それと同じだ。



「ふふふっ」



「むっ」



 今度は立場が逆になってやがる。


「二人とも得意気になんな。どっちも重要なんだよ。一夏は戦闘において素人に等しいんだからな」


「「……むぅ」」



 むぅ、じゃありません。
 可愛く言っても駄目だ。












 俺たちは第三アリーナのAピットに入る。



「待ってたわよ、一夏!」



 あん? 何故か鈴ががいる。
 それに、腕組みをしてふふんと不敵な笑みを浮かべている。



「貴様、どうやってここに──」



「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!」



 なんか、今日は箒の台詞が切られんな……。



「はんっ、アタシは関係者よ。一夏と涼夜の関係者。だから問題なしね」



 まァ、そうだろうが。
 なんか違うんじゃね?



「ほほう、どういう関係かじっくり聞きたいものだな……」



「盗っ人猛々しいとはまさにこのことですわね!」



 こいつら何でキレてんの!?
 沸点低過ぎじゃねェか?







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