Infinite Stratos:Re

□第七夜
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「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」



「そ、そうなのか? 一応、涼夜兄に説明してもらったんだが……」



 シャルルが転校してきてから五日が経って、今日は土曜日だ。
 ナイフ? あァ、作り終わったよ。おかけで寝不足でな。一日三回は織斑先生に叩かれた。
 まァ、それは置いといて。
 IS学園の土曜は午前が理論学習で午後は自由だ。
 その時間を使い、一夏の特訓をしているのだ。



「うん。知識は知ってみるみたいだね。間合いの詰め方とかは教えてないの?」



「一夏と俺じゃ色々と違うからな。一夏自身がやりやすい動きを見つけて欲しいんだよ」



 一夏と俺では身体能力、動体視力判断能力etc……全てが違うのだ。



「そっか」



 俺の返答に納得したように呟くシャルル。
 この考えは当然一夏にも伝えてある。
 俺の考えを訊いたシャルルが一夏に懇切丁寧に反省点を説明していく。
 箒の説明は抽象的。
 鈴は感覚的。
 セシリアは超論理的。
 そんな説明しか出来ない奴らばっかだったからか、一夏は嬉しそうだ。



「──じゃあ、射撃武器の練習をしてみようか。はい、これ」



 そう言って一夏に渡したのは、先程までシャルルが使っていた五五口径アサルトライフル《ヴェント》だ。
 普通は使えない他の装備だが、所有者が使用許可をすれば登録してある人は使えるのだ。



「か、構えはこうか?」



「……もっと脇を締めろ。で左腕はこっちだ」



 わざわざ俺に訊いてきた一夏の左腕を誘導してやる。



「火薬銃は反動がでかいが……まァ、そこはISがフォローしてくれるだろ」



「そうだね。一夏、センサー・リンクは出来てる?」



「いや……さっきから探してるんだけど、見当たらない」



 IS戦は高速での射撃なので、そこはハイパーセンサーとセンサー・リンクの連携が必用になる。
 ターゲットサイトを含む銃撃に必用な情報を操縦者に送るために武器とハイパーセンサーを接続するのだ。



「うーん、格闘専用の機体でも普通は入ってるんだけど……」



「普通じゃないってだけだろ?」



「うっ、そう言えば欠陥機って言われたな」



 それが本当に“欠陥”なのかは俺には判断出来ないけどな。



「じゃあ、行くぞ」



 一夏がそう言い、遠くに設置された的に向かって構える。
 バンッ! と響いた銃声。



「うおっ!?」



 火薬の炸裂音に驚く一夏。
 弾丸は見事に的から外れていた。



「……涼夜兄」



「……なんだ」



「お手本を見せてください」



 何で俺に頼むんだよ。
 シャルルに頼めよ。
 つか、何で俺が出来ると思ってるんだ。



「……シャルル」



「うん」



 俺が打鉄を起動するとすぐに使用許可を出してくれた。



「……手本にはならないぞ」



 右手で受け取ったヴェントを左手で構える。
構え方も独特だ。
 手の甲が上になるように銃身を横に構えている。



「左手?」



「銃は左で持つ派なんだ」



 一夏の疑問に軽く応え、発砲する。
 的は四つ。
 それを端から順に撃ち抜いて行く。
 ……。



「すげえ……!」



「「「「…………」」」」



 一夏が驚き、シャルル達に至っては茫然としている。
 まァ、当たり前だ。
 俺の構えは我流と言ってもいいし。
 データを展開すると、全てが中心からの誤差一ミリ以内だ。
 俺の腕ならこんなもんか。



「これくらいなら練習すれば出来るぞ」



「本当になんでも出来るんだね」



 一夏以外が茫然としてる中、シャルルに声をかけられる。



「固定標的なんだよ。……実戦では“的”が自らの思考で動くし考える。ISならハイパーセンサーがあるしな」



「それでも凄いよ! 涼夜兄はどこで覚えたの!?」



「……ハワイだ」



 我ながら苦しいと思った。
 某少年探偵がハワイで習ったと言っていた気がしたような、そんなこともないような。とにかくそう応えた。



「ああ、射撃場とかいっぱいあるらしいもんな!」



 シャルルから少し疑いの眼差しを受けたが、一夏が興奮しまくってるので、自分も気にしないことにしたようだ。







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