Infinite Stratos:Re
□第八夜
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◇
六月も最終週。
今日からは学年別トーナメントだ。
全生徒が慌ただしく、雑務や会場の整理、来賓の誘導をしている。
「しかし、すごいなこりゃ…」
更衣室のモニターから観客席の様子を見、一夏が呟く。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。一年にはあまり関係ないみたいだけど」
「まァ、一年でも上位者にはチェックは入るだろ」
「ふーん。ご苦労なことだ」
興味なさげだな。お前だって無関係じゃないのに。
「一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいだね」
「まあ、な。……自分の力を試せもしないってのは、辛いだろ」
……セシリアと鈴のことか。
相変わらず優しいねェ。
トン、と一夏の胸に拳を当てる。
「あまり感情的になるなよ? ……常に冷静に。それでいて熱く。矛盾してるが、俺の言いたいこと判るな?」
「ああ、クールに最強、だろ?」
俺は笑みを浮かべ頷く。
「シャルル、一夏を頼む。知っての通り、半人前だからな」
「うん、任せてよ」
シャルルに、頼もしいな、と笑いかける。
「じゃあ、俺も相棒の所に行かせてもらう。──良い戦いを」
俺はそう言い放ち、更衣室を後にした。
◇
涼夜がいなくなった更衣室。
「結局誰と組んだんだろうね、涼夜」
「うーん。箒じゃないとしたらのほほんさんかな?」
「のほほんさんって……布仏さんだよね?」
「案外仲いいんだぜ? あの二人」
ふーん、と興味なさそうに返すシャルルだが、内心穏やかではなかった。
(涼夜は布仏さんが好きなのかな……言われてみると相性もいい気がしてきた……)
布仏に抱きつかれる涼夜は、いつも最初は抵抗するが最終的に涼夜が折れている。最近は抵抗すらも減ってきている気もする。
(布仏さんにだけやけに弱いし……)
シャルルはそう考えるが、一夏や箒達、当然シャルルにも弱い。
「とにかく当面の目的はラウラだ」
「あ、うん。そうだね。……彼女はおそらく一年の中では現時点で最強だと思う」
「え?」
一夏の疑問は涼夜のことだろう。
「涼夜は打鉄だからね。専用機があれば間違いなく涼夜が最強だよ」
「ああ、そうか。……あれで量産機なんだよな……」
「一夏?」
「あ、ああ。いや、何でもない」
一夏は改めて自分が憧れ、目標とする存在の大きさ、自分と彼の距離を感じていた。
「っと、そろそろ対戦表が決まるぞ」
「あ、本当だ」
モニターがトーナメント表に切り替わった。
二人は食い入るように見つめる。
「「──え?」」
出てきた文字を見て、一夏とシャルルは同時にぽかんとした声をあげた。
一回戦の相手はラウラ、そして──涼夜ペアだった。
◇