Infinite Stratos:Re
□第九夜
1ページ/10ページ
◇
「ゴメンね、手伝ってもらっちゃって」
「気にするな」
放課後の廊下、赤い夕日が差し込む中を涼夜とシャルロットが並んで歩いていた。
二人共その手には今月の行事、臨海学校について書かれたプリントを持っている。
「でも、よかったの? 今日はセシリアたちと街に行く予定だったんでしょ?」
「あいつらには一夏がついてるからな。俺はシャルロットといたいし」
「えっ?」
「まァ……アレだ。……誰だって好きなやつといたいだろ?」
そう言った涼夜の頬はわずかに赤く染まっている。それは夕日の色だけではないように見えた。
「涼夜……」
「シャルロット……」
二人しかいない廊下でお互いに相手だけを映した瞳。
そこに言葉はいらなかった。
オレンジ色の光景の中、二人の影が徐々に重なって──、
「──あ、れ?」
ぼーっとした頭で状況を確認するシャルロット。
場所はIS学園一年生寮の自室。時間は早朝六時半。
「…………」
シャルロットはまだはっきりしない意識のまま、二回まばたきをし、現状を把握した。
「夢……」
はぁぁぁぁ……っと深く。深くため息を漏らす。
(ああ、せめてあと十秒くらい見ていれば……)
夢の残骸に思いを馳せ、その名残を惜しむ。
本来ならすぐにでも忘れてしまう夢なのだが、執着ゆえか。なかなか消えない。
それをビデオを見るような感覚で、もう一度頭の中で再生する。
「…………」
ぼっ、とシャルロットが赤くなった。
意識がはっきりするにつれ恥ずかしくなる。
(が、学校の廊下で、なんて……)
しかし、文字通り夢見心地だった。
胸に手を当てなくても早鐘を打っているのがわかる。
先月の学年別トーナメント以降、シャルロットは涼夜とは別の部屋になっている。
けれど、週に二回は今のような夢を見て、ついつい隣に涼夜を求めて視線をやってしまう。
「あれ?」
隣にルームメイトの姿がない。
それもベッドを使った形跡すらない。
「……まあ、いいや」
それよりも夢の続きである。
今なら夢の続きを見れるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて、シャルロットは眠りにつこうと瞼を閉じた。
(でもせっかく夢なら、もうちょっとエッチな内容でも僕は全然構わな──)
……。
「な、何を言ってるんだろうね、僕はっ!?」
赤くなった顔を隠すように、頭のてっぺんまで布団を被ると、ドキドキと高鳴る心臓をなだめるのに苦心するシャルロットだった。
◇