Infinite Stratos:Re

□第十一夜
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 合宿二日目。
 今日は午前中から夜まで丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。
 特に専用機持ちは大変らしい。



「ようやく全員集まったか。──おい、遅刻者」



「は、はいっ」



 千冬さ……織斑先生に呼ばれて身をすくませたのは、意外にもラウラだった。
 あのラウラが珍しく寝坊したようで、集合時間に五分遅れてやってきた。


「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみろ



「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のために設けられたもので、現在はオープンチャンネルとプライベート・チャンネルによる操縦者会話など、通信に使われています。それ以外にも非限定情報共有〈シェアリング〉をコア同士が各自に行うことで、様々な情報を自己進化の糧として吸収しているということが近年の研究でわかりました。これらは制作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため、現在も進化の途中であり全容は掴めていないとのことです」



「さすがに優秀だな。遅刻の件はこれで許してやろう」



 そう言われて、ふうと息を吐くラウラ。
 心なしか、胸をなで下ろしている。
 おそらくドイツ教官時代にイヤというほど恐ろしさを味わったのだろう。



「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」


 はーい、と一同が返事をする。
 さすがに一学年全員がずらりと並んでいるので、かなりの人数だ。
 ちなみに現在位置はIS試験用のビーチで四方を切り立った崖に囲まれている。



「ああ、篠ノ之お前はちょっとこっちに来い」



「はい」


 打鉄用の装備を運んでいた箒は織斑先生に呼ばれて向かう。
 ……何だ?



「お前には今日から専用──」



「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」



 ずどどどど………! と砂煙を上げながら人影が走ってくる。
 無茶苦茶速い。多分、ISっぽい何かをつけてるからだろう。
 問題はその人影が──。


「……束」


 だということだ。
 立ち入り禁止もなんのその、稀代の天才・篠ノ之束さんは堂々と臨海学校に乱入してきた。



「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ──ぶへっ」



 飛びかかってきた束さんを片手で掴む。しかも顔面。思いっきり指が食い込んでいた。



「うるさいぞ、束」



「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」



 そしてその拘束から抜け出す束さんもただ者ではない。
 よっ、と着地した束さんは、今度は箒の方を向く。



「やあ!」


「……どうも」



「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」


 がんっ!


「殴りますよ」


「な、殴ってから言ったぁ………し、しかも日本刀の鞘で叩いた! ひどい! 箒ちゃんひどい!」



 頭を押さえながら涙目になって訴える束さん。
 そんなふたりのやりとりを、一同はぽかんとして眺めた。



「え、えっと、この合宿では関係者以外──」



「んん? 珍妙奇天烈なことを言うね。ISの関係者というなら、一番はこの私において他にいないよ」


「えっ、あっ、はいっ。そうですね……」


 山田先生轟沈。
 まァ、仕方ないと言えば仕方ないが。







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