Infinite Stratos:Re

□第十四夜
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 翌朝。
 朝食を終えて、すぐにIS及び専用装備の撤収作業に当たる。
 そうこうして十時を過ぎたところで作業は終了。全員がクラス別のバスに乗り込む。昼食は、帰り道のサービスエリアで取るらしい。
 昨日はあの後も数時間に渡って追い回された。それだけならまだしも、結構な戦闘と魔力を消費していたこともあり、えらくしんどい。
 更にはラウラ、セシリア、シャルから人を殺せるような視線を現在進行形で向けられている俺。
 一夏に目で助けを求めてみるが、疲れているのか、気付いてすらもらえない。
 箒に至っては、もうずっと目を合わせて貰えていない。



「……寝るか」



 俺は小さく呟き、手すりに肘をつくようにして目を閉じる。
 あー、福音の操縦者にどうやってコンタクトとるかな……。
 あれって確かアメリカ・イスラエルの共同開発機だよな。ってことはその辺の国家サーバーにハッキングでもすれば何か掴めるか?



「ねえ、織斑一夏くんと碧海涼夜くんっているかしら?」



 目を閉じながら思考に没頭していると聞き覚えのない声が訊こえた。



「あ、はい。俺が織斑一夏ですけど」



 一番前の席にいた一夏が素直に返事をする。
 その女性は恐らく二十歳前後。
 鮮やかな金髪が夏の日差しで輝いて眩しい。
 格好はブルーのサマースーツ。と言ってもビジネススーツではなく、おしゃれ全開のカジュアルスーツで、開いた胸元からは大人の女性特有の整った膨らみがわずかに覗いている。
 とりあえず面倒はごめんなので、俺は一時的に開いた目を再び閉じる。



「君たちがそうなんだ。へぇ」



 女性はそう言うと、一夏と俺を興味深そうに眺める。
 なんで返事してないのに視線を感じるんだ……ってIS学園のバスに乗ってる時点で俺イコール碧海涼夜の方程式が成り立ってんのか。一夏は返事してたし。



「あ、あの、あなたは……?」



「私はナターシャ=ファイルス。銀の福音〈シルバリオ・ゴスペル〉の操縦者よ」



 その言葉を訊いた俺は、座席からずり落ちそうになりながら立ち上がる。
 と。
 ちょうど一夏がナターシャに頬にキスをされているところだった。


「え、あ、う……?」



「これはお礼。ありがとう、白いナイトさん」



 そう言ったナターシャが、今度は再び俺に向き直る。



「狸寝入りはもういいのかしら、黒いナイトさん?」



「……勘弁してくれ。騎士なんてのは柄じゃない」



「そう? とても似合っていると思うけれど」



 品定めをしているわけではない。純粋な好奇心で観察するように俺を眺めるナターシャ。



「まァ、それはいい。……話がある。着いてきてくれ」



 それだけ言って俺はナターシャのすぐ横を通り抜ける。



「……わかったわ。じゃあまたね、白いナイトさん」



 ナターシャは未だにぼーっとしたままの一夏に手を振って、俺を追ってきた。







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