Infinite Stratos:Re

□第二夜
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「五反田食堂……ねェ」



 聞いたことないな。
 だが、外からでも賑わっているのが判る辺り、隠れた名店ってやつか?



「いらっしゃい……ってまた来たのか」



「せっかく来たのにひどいと思わない?」



「とりあえずヒロさんが嫌われてるのがよく判った」



 ヒョコ、と俺が顔を出した瞬間に店内の空気が止まった。



「なっ」



 そんな中、店主であろうおっさんが代表するように口を開く。



「お前、男……か?」



 これには流石に俺も固まってしまった。



「……その質問は予想外過ぎる」



「うん、彼は正真正銘の男だ」



 ここでまた固まる店内。



「「「ヒロが男を連れて来た!?」」」



 店内にいた人のほとんどがハモっていた。
 あァ。
 そういうことですか。
 物凄く納得できた。
 来る度に知らない女と来てたんだな。



「この間も連れて来ただろ?」



「まあ、そうだが……」



 そう答えた店主に呼応するように店内から声があがる。



「この前と全然違うタイプじゃねーか!」


 とか。



「ホントは男もイケんだろ!?」



 等々。
 実に多種多様だ。
 尤も、言ってる側も言われてる側も終始笑顔だが。
 結局、俺が普通の友人です、と言うまで騒がれてしまった。



「……ったく」



「いやー、ごめんごめん」



 漸く席に着いた俺達。
 カウンター席の隣に座ったヒロさんが軽く謝ってくる。



「別にいいけどさ」



「そう言うと思った」



 ……どういう意味だ、それは。



「決まった?」



「あァ」



「それじゃ──」



「決まったのか?」



 ヒロさんが言い終わる前に店主──おやっさんが声をかけて来た。



「おやっ──」



「サバの味噌煮込み定食で」



「……おれも同じもので」



 折角なので俺も切ってやった。
 出された料理は本当に美味しく、賑わっているのも納得の味だった。



「ふゥ……御馳走様でした」



 箸を置き手を合わせる。



「ほう」



 おやっさんが俺を見てそう頷いてきた。



「何か?」



「今時、こんな食い方ができるやつは珍しいと思ってな」



「そうなのか?」



 関心したように言われ、既に食べ終わっていたヒロさんに顔を向ける。



「育ちの良い女の子みたいだ」



 死ね。



「そこのチャラ男とは違うな」



 きっぱりと言い切るおやっさんに、ヒロさんは、ひどいなあ、とぼやく。
 俺は改めて自分の食器を見てみる。
 特に垂らしたりこぼしたりはせず、全部を普通に食べたんだが……。



「あ、やっぱりヒロさん来てたんですね」



「や、蘭ちゃん。ひさしぶり」



 どこが良いのかを聞く前に、後ろからヒロさんに声がかけられた。


「おれが来てるって、よくわかったね」



 あ、食器がさげられた……。
 完全にタイミングを失ってしまった。



「だってさっき凄く騒いでたじゃないですか。仕事は終わったんですか?」



「ヒモはクリエイティブな仕事だから時間は比較的自由になるんだよ」



 意味の判らないことをほざくヒロさん。
 そもそもヒモは仕事じゃない。



「蘭、あまりそいつに関わるな」


「ほんとひどいね、おやっさんは。──と、紹介するよ、おれの友達の碧海涼夜くん」



 おい、勝手にバラすか? 普通。



「え、碧海って……まさか」



 周りが騒がしい為に俺の名は誰にも聞こえていないようなのが幸いだ。



「まァ……想像通りだと思う」



「今は変装中なんだよ、彼」



「そうなんですか……私は五反田蘭です。よ、よろしくお願いします」



「あァ、よろしく」



 軽い挨拶を交わし、俺はコップに手を伸ばし水を飲む。



「それで? 蘭ちゃん。何の用かな? もしかしておれに逢いたくて?」



「莫迦か」「んな訳あるか」



 俺とおやっさんが同時に言い放つ。



「実は……──」






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