Infinite Stratos:Re

□第三夜
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 俺が戦い終わると、すぐにオルコットの補給をすまし第二回戦が始まった。
 何でもアリーナの使用時間が残り少ないらしい。



「一夏の調子が上がってきたか……」



 俺はリアルタイムモニターから一夏の動きを見てそう感想を述べる。



「あの馬鹿者。浮かれているな」


 すぐ近くにいる織斑先生がそう言う。



「えっ、どうしてわかるんですか?」



「さっきから左手を閉じたり開いたりしているだろう。あれは、あいつの昔からのクセだ。あれが出るときは、大抵簡単なミスをする」



「へぇぇぇ……。さすがご姉弟ですねー。そんな細かいことまでわかるなんて」



 確かに。



「ま、まあ、なんだ。あれでも一応私の弟だからな……」



「あー、照れてるんですかー? 照れてるんですねー?」



「織斑先生も可愛いところあるんですね」



 絶対照れてるな。



「……」



 ソッと俺と山田先生の頭に手をそえると、ぎりりりり、と阿呆みたいな握力で握ってきた!



「「いたたたたたたっっ!?」」


「私はからかわれるのが嫌いだ」


「はっ、はいっ! わかりました! わかりましたから、離し──あうううっ!」



「ちょっ、マジ……放して……!」



 改めて織斑先生の恐ろしさを実感したとき、試合は大きく動いた。











 ──穫った!
 セシリアの間合いに入った一夏がブルー・ティアーズのピットを吹き飛ばし、確実に一撃が入るタイミング。
 瞬間、にやりと笑うセシリアを見て、一夏は悪寒を感じ取る。
 セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマー。
 その突起がはずれて動き始めた
 一夏は急いで離れようとするが、さっきのレーザー射撃でなく弾道型〈ミサイル〉であるため、避けてもついて来る。



(あ、やばっ!)



 弾道型の存在を失念していた。
 一夏の凡ミスその一だ。
 ドガァァァァンッ!! という爆音。
 赤を超えて白い、その爆発と光に一夏は包まれた。










「あの莫迦……」



 忘れてやがったな……。
 折角タイミングは完璧だったのに。



「一夏っ……!」



 ミサイルを喰らった一夏を見て思わず声を上げた箒の声が聞こえる。
 俺、織斑先生、山田先生も、爆発の黒炎に埋まった画面を真剣な面持ちで注視する。
 もし、ミサイルが直撃していればシールドエネルギーは零、一夏の負けだ。



「──ふん」



 織斑先生が鼻を鳴らす。顔と声には安堵感を感じる。



「機体に救われたな、馬鹿者め」


 織斑先生の言葉を聞いて、俺はモニターに目を向ける。
 画面中央には、かすかに漂っている煙。
 次の瞬間、弾けるように吹き飛ばされる。
 そしてその中心には、純白の機体があった。












「これは……」



「ま、まさか……一次移行<ファースト・シフト>!? あ、あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?」



 セシリアの表情を驚愕の一色に染まっている。



「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」



(涼夜兄にも感謝しなきゃな……)



「は? あなた、何を言って──」



「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!」



「だからさっきから何の話を……!!」



 セシリアは弾頭を再装填したビットが二機、一夏に向かわせる。



(見える!)



 ギンッ! と一閃。
 ビットを両断した一夏は再びセシリアへと突撃する。



「おおおおっ!」



 一夏のIS専用機“白式”の武器近接特化ブレード《雪片弐型》の刀身が光を帯びる。



(いける!)



 誰もがそう思った瞬間だった。






『試合終了。勝者──セシリア・オルコット』



「あれ……?」







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