Infinite Stratos:Re
□第三夜
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◇
翌日、朝のSHR。
「では、一年一組の代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
嬉々として喋っている山田先生。クラスの女子も盛り上がっている。
暗い顔をしているのは一夏だけだ。
「先生、質問です」
「はい、織斑君」
「俺は昨日の試合に負けたんですが、なんでクラス代表になってるんでしょうか」
「それは、碧海君が辞退したからです」
その言葉を訊き、一夏がこちらを見てくる。
それに伴い先生や女子の視線もこちらに集まる。
「……俺はともかく」
俺は俺で視線を動かす。
「──オルコットはそれでいいのか?」
視線の先はセシリア=オルコット。
散々男を見下していた訳だが。
「まあ、勝負は一夏さんの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせ私セシリア=オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ」
わざわざ立ち上がり、腰に手を当てるポーズをしながら上機嫌に答える。
(あれ? 今俺のこと名前で呼んだ?)
今一夏のこと名前で呼んだよな?
箒の次はオルコットか……。
流石は一夏だ。
「それで、まあ、私も大人げなく怒ったことを反省しまして。一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実践が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いに事欠きませんもの。涼夜さんもそれを望んでいたのでしょう?」
「……否定はしない」
俺は一夏にクラス代表になって欲しかったからな。
その為にオルコット戦では時間を掛けた。
実際試合は無くなってしまったが、一夏戦の際は勝ったら辞退すればいいし、負けてもいいと考えていた。
あれ? 今俺名前で呼ばれたか?
あァ、将を射んとすればなんとやらってか。
「そうだよねー。折角男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとねー」
「碧海君が良かったな……」
「私たちは貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。一粒で二度おいしいね」
また商売が始まるのか。
「そ、それでですわね」
コホンと咳払いをして、あごに手を当てるオルコット。
ちらりと俺の方を見たかと思えば、一夏に向き直る。
「私のように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ──」
バン! と机が叩かれる。
立ち上がったのは、やはり箒だった。
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、“涼夜”に直接頼まれたからな」
おィ。
何故俺の名前を強調した。
あれか? オルコットに勝ったからか?
「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aの私に何かご用かしら」
「ら、ランクは関係ない!頼まれたのは私だ。涼夜がどうしてもと懇願するからだ……それに涼夜自身も手伝うと言っている!」
手伝いはすると言ったが、俺がいつ懇願したよ?
「座れ、馬鹿ども」
すたすたと歩いて行って箒、オルコットの頭をばしんと叩いた織斑先生が低い声で告げる。
流石は元日本代表にして第一回世界大会覇者、凄味が違う。
「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣をつけようするな」
箒とオルコットが座ったのを確認し、織斑先生が言い放つ。
容赦ないな。
「くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自重しろ」
揉め事が駄目なら最初から止めろよ。
本当は楽しんでたろ、ブラコンめ。
そしてまた、バシン! と響いた。
「何か今失礼なことを考えていただろう」
俺が出席簿で叩かれた。
なんだこれ、滅茶苦茶硬い。
「滅相もありません」
「ほう」
バシンバシン! と二連続攻撃。
「すみませんでした」
「わかればいい」
くっ、何で俺の思考が読めんだよ!?
「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
はーいと、一夏を除くクラス全員が一丸となり返事をした。
俺は叩かれた頭を押さえて沈んでいたが。
◇
あとがき
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