Infinite Stratos:Re
□第四夜
2ページ/11ページ
◇
(来い……!)
一夏の手のひらから光が放出され、収まった頃には《雪片弐型》が握られている。
「遅い。0.5秒で出せるようになれ」
その言葉にがくりと首を下に向ける一夏。
「オルコット、武装を展開しろ」
「はい」
オルコットは、さっきの一夏よりも早く狙撃銃《スターライトmkV》を展開する。
「さすがだな、代表候補生。──ただし、そのポーズを止めろ」
織斑先生が指摘したのは、左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出す格好だ。
「横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ? 正面に展開できるようにしろ」
「で、ですがこれは私のイメージをまとめるために必要な──」
「直せ。いいな?」
「──……はい」
反論の余地なし。
当たり前のことだし仕方ない。
あァいや、俺達のような機工魔術士〈エンチャンター〉にとってイメージとかは大事なんだが。
「オルコット、近接用の武装を展開しろ」
「えっ? あ、はっ、はいっ!」
何かを考えていたのか、反応が鈍るオルコット。
銃器を光の粒子に変換し『収納〈クローズ〉、そして新た近接用の武装を『展開〈オープン〉』する。
「くっ……」
「まだか?」
だが、さっきの一夏みたいに中々形にならず、光が空中にさまよっている。
「す、すぐです。──ああ、もうっ! 《インターセプター》!」
武器の名前を叫んで武器を展開する。
ちなみに、これは教科書の頭の方に書かれている、いわゆる『初心者用』の手段だ。
これは、代表候補生であるオルコットにとっては屈辱的だろう。
「何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」
「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」
「ほう。碧海と織斑には簡単に懐を許していたように見えたが?」
「あ、あれは、その……」
オルコットに睨まれた。
なに? 俺が悪いとでも言うのか?
「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ……碧海もだ」
「え」
「授業中にイチャついた罰だ」
わざわざ俺にだけ聞こえるように近づいて来て言う。
先程のアレがイチャついてる様に見えたんなら眼科行け。
バシン! と一発。
「分かったか?」
「了解」
一夏以外のみんなが戻るかと思いきや、何故かオルコットが、タイミングを見計らったかのように俺の方に来た。
「あなたのせいですわよ!」
「あ?」
いきなりそんな事を言ってくるオルコット。
「あ、あなたが、私に飛び込んでくるから……」
「近接武器しかないのに接近するなと?」
「せ、責任をとっていただきますわ!」
「……会話が噛み合ってねェぞ」
そんな不毛な会話をどうにか終わらせて、俺と一夏はグラウンドを直しにかかる。
「……土、どこだっけ?」
「さァ?」
これは難航しそうだ。
◇