Infinite Stratos:Re
□第六夜
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◇
「ねえ、聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「え、何の話?」
「だから、あの織斑君と碧海君の話よ」
「いい話? 悪い話?」
「最上級にいい話」
「聞く!」
「まあまあ落ち着きなさい。いい? 絶対これは女子にしか教えちゃダメよ? 女の子だけの話なんだから。実はね、今月の学年別個人トーナメントで──」
食堂はかなり騒がしい。
特に奥の方で十数名がスクラムを組んでいる一団がうるさい。
「あそこのテーブル、やけに騒がしいな」
「トランプでもやってんじゃないの? それか占いとかさ」
だからといってあそこまで騒がしくなるか?
でも女子ってそういうの好きなんだよな……。
「えええっ!? そ、それ、マジで!?」
「マジで!」
「うそー! きゃー! どうしよう!」
もう無視しよう。そんでとっとと部屋に帰ろう。
「涼夜、こっちよ」
「……あァ」
本日の夕食は鈴を真似て、チキンの香草焼きと山芋と野菜の煮物、だし巻き卵、ほうれん草の赤だし味噌汁だ。ちなみに鈴はアサリの白味噌汁を選んでいた。
「あーーっ! 碧海君だ!」
「えっ、うそ!? どこ!?」
「ねえねえ、あの噂ってほんと──もがっ!」
さっきの騒がしい連中が俺の存在に気づいた女子が雪崩込んでくる。
そして、俺に話しかけてきた女子が何かを言い掛け、他の女子に取り押さえられた。
「噂?」
「い、いや、なんでもないの。なんでもないのよ。あははは……」
「──バカ! 秘密って言ったでしょうが!」
「いや、でも本人だし……」
一人が俺の前で大の字になって、後ろの小声で話す二人を隠している。
「で、なんだ、噂って?」
「う、うん!? なんのことかな!?」
「ひ、人の噂も三六五日って言うよね!」
滅茶苦茶長いな。
「な、何言ってるのよミヨは! 四十九日だってば!」
それも違う。
ってか。
「なんか隠してるだろ?」
秘密って言ってたしな。
「そんなことっ」
「あるわけっ」
「ないよ!?」
見事な連携技を決め手から即撤退。この間わすがに二秒。
あまりの早さに何も出来なかった。
「何なんだ?」
「……」
意味が判らず溜め息を吐いていると、鈴がまたジト目で俺を睨む。
「あんたってやっぱりモテてんの?」
「……なんでソコに話が戻った」
あー、嫌な予感しかしない。
◇