Infinite Stratos:Re
□第七夜
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◇
「そう言えば、そのISって山田先生のと大分違うように見えるんだが本当に同じ期待なのか?」
一夏がシャルルに問いかける。
山田先生の『ラファール・リヴァイブ』はネイビーカラーに四枚の多方向加速推進翼〈マルチ・スラスター〉が特徴的だった。
対してシャルルのは、カラーだけでなくフォルムも違う。
背中の一対の推進翼は中央から二つの翼のようで、より機動性と加速性が高くなっている。また、アーマー部分も山田先生のものより小さく、マルチウェポンとして大きなリアスカートがついている。
そして何より違うのが、肩のアーマーで、本来ついている四枚の物理シールドが全て外れている所だ。
「僕のは専用機だからかなりいじってあるんだよ。正式にはこの子の名前は『ラファール・リヴァイブ・カスタムU』。涼夜ならどんなカスタムかわかるかな?」
楽しそうに俺を見つめてくるシャルルに俺は小さく溜め息をつく。
なんでどいつもこいつも俺に訊くんだ……。
「……基本装備〈プリセット〉を外すことで、拡張領域〈バススロット〉を増やした……のは判る」
シャルルの装備は今までの特訓でも見ていたので、装備の多さは判った。
「うん、流石だね。この子の拡張領域〈バススロット〉は倍にしてあるんだ」
「倍!? そりゃまたすごいな……。ちょっと分けて欲しいくらいだ」
「あはは。あげられたらいいんだけどね。そんなカスタム機だからいま量子変換〈インストール〉してある装備だけでも二十くらいあるよ」
「火薬庫だな、それは」
全てがIS専用兵装なのだから、相当の火力を有していることになる。
……しかし眠いな。
「ねえ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
急にアリーナがざわつき始めた。一夏はちょうど一マガジン分十六発撃ちきったところだった。
「……」
俺は先程から眠いのを我慢して騒ぎの方を見ていたので、そこにいるのがボーデヴィッヒだと確認していた。
「おい」
「……なんだよ」
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
一夏にいきなり戦闘を挑むボーデヴィッヒ。
「イヤだ。理由がねえよ」
「貴様にはなくても私にはある。……貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を──貴様の存在を認めない」
一夏はかつて──織斑千冬が第二回IS大会の決勝戦の日に誘拐されている。
そして、それを助ける為に千冬さんは不戦敗になっている。
「……」
かつての俺なら『それはお前のエゴだ』とボーデヴィッヒに言えたであろう。
しかし今の俺には言えない。
誰にだっているのだ。
“絶対的な存在”が。
「また今度な」
「ふん。ならば──戦わざるを得ないようにしてやる!」
言うが早いが、ボーデヴィッヒはその漆黒のISを戦闘状態へシフト。
左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。
意味が判らない。
だって──。
「ISを展開していない人に向かって発砲するなんて、ドイツ人はずいぶん常識がないんだね」
「貴様……」
標的が俺なんだぜ?
横合いからシャルルが割り込んでシールドで助けてくれたけど。
今現在、シャルルは六一口径アサルトカノン《ガルム》を展開してボーデヴィッヒに向けている。
ぶっちゃけた話、シャルルに護られなくても平気だったわけだが。
「フランスの第二世代ごときで私の前に立ち塞がるとはな」
「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代よりは動けるだろうからね」
あん? シャルルの奴怒ってるな。
しかし早かったな、シャルルの装備を呼び出すの。
量子構成ですら一瞬だった。
流石は代表候補生だ。
「そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!」
突然アリーナのスピーカーから声が響く。騒ぎを聞き付けてやってきた担当の教師だ。
「……ふん。今日は引こう」
意外にもボーデヴィッヒはあっさりとアリーナゲートへと去っていく。
「涼夜、大丈夫? ……って僕が助ける必要なかったかな?」
「いや、助かった。ありがとな」
俺がボーデヴィッヒの攻撃された瞬間に打鉄を起動し近接ブレードを展開したのをしっているのだろう、シャルルの言葉。
俺はシャルルの頭を軽く撫で、一夏の元に向かう。
頬を赤らめたシャルルを後ろに俺は大きく体を伸ばす。
一波乱あったが、今日はこれで解散だな。
◇