Infinite Stratos:Re
□第七夜
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◇
今現在俺は自室でシャワーを浴びている。
「……」
シャルルはまだ部屋に戻ってきていないが。
そういえばシャルルに関してだが、やはり女だ。
別に確かめたわけではないが、情報屋“折原臨也”に調べさせたのだ。
嫌いな情報屋だが、その情報網は広い。……金は取られたが。
キュッ、とシャワーを止めると外から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「──碧海くーん、いないんですかー?」
この声は山田先生だな。
俺は慌てて体を拭き、下着とズボンをはく。とりあえず、シャツを掴みシャワールームを出た。
「あ、なんだ、いるじゃないです──か」
あ。
俺がまだ上半身裸なのを知るわけもない山田先生が、勝手に中に入りやがった。
「……碧海君……はだか…………たくましい…………抱かれ……」
物凄い勢いで顔を真っ赤にした山田先生は、良く判らない呟きをしながら倒れた。
「…………涼夜?」
「……何も言うな」
なぜこのタイミングで戻ってきたシャルル。
山田先生を中に入れ、シャルルに何があったかを説明していると、説明が終わるとほぼ同時に山田先生の目も覚めた。
「あれ……私……なんで……」
「先生は扉の前で倒れてたんですよ」
「え? そ、そうなんですか?」
本当のことを言ってまた倒れられるのも面倒なので、適当に誤魔化す。
「あァ。な、シャルル」
「え? あ、うん。先生は倒れてたましたよ?」
あ、俺いま一瞬タメ口だった。……いいか。
シャルルに振ると少し驚いた様だが、俺の意図を察してくれた。
「それで……先生は何か用が?」
「あ、はい。今月下旬から大浴場が使えるようになります。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることになりました」
「そうですか」「そうなんですか」
山田先生の言葉に似たような反応で返す俺とシャルル。
冷めてるわけでもなく興奮してるわけでもない、そんな感じだ。
「……」
そんな俺達を不思議そうに見つめる山田先生。
「えと……嬉しくないんですか?」
「え、嬉しいですよ。シャルルもだろ?」
「あ、う、うん」
あー、シャルルは女の子だからな。
「あ、そうですか。良かったです」
俺達の返答に満足したのか、山田先生は笑顔で部屋から出ていった。
山田先生が出ていき、今度はシャルルがシャワーを浴び始める。
「涼夜兄ー」
「……一夏、部屋主の返事を待たずに部屋に入るな」
一夏がいきなり部屋に入ってきた。
「あれ? シャルルはシャワーか」
「あァ、お前はどうした?」
「あ、うん。シャワーを借りたいんだ」
うん?
「自分の部屋は?」
「ちょっと今は……」
こいつまた箒と喧嘩したのか。
……。
話を聞いてみたが、要約すると……アリーナを出た後に山田先生から大浴場の使用許可をもらった際に、興奮して山田先生の手を握ったら何故か箒が怒り出したらしい。
……何故か怒り出したって、お前。
「あ、あの……涼夜」
シャワールームから籠った声が聞こえてきた。
「どうした?」
「その……ボディーソープが……」
「あァ、ちょい待ち」
切れたのか。
……どうやって渡せばいい?
「ボディーソープってこれだろ?」
一夏がテーブルの脇に置かれたボディーソープに気付く。
「あ、ちょっと待て一──」
俺の静止を訊かずシャワールームへ突撃する一夏。
タイミングが悪かった。
本来ならシャワールームに扉。扉を出た所に洗面所。洗面所に扉があるのだが。
ちょうどシャルルが洗面所に体を出していたわけだ。
「い、い、いち……か……?」
「え、えっとだな……えーと……」
「きゃあっ!?」
可愛らしい悲鳴の後にシャワールームの扉を閉める大きな音が響く。
「……ボディーソープ……ここに置いとくから……」
一夏が茫然としながら洗面所から出てくる。
「…………」
彼の顔が赤い辺り、一夏も健全な男子高生なのだろう。
「やっぱりお前……」
一夏がゆっくりとこちらを見る。
「ラッキースケベだ」
「……ひ、否定出来ねえ……」
そもそもさせねェし。
◇