Infinite Stratos:Re

□第七夜
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「「あ」」



 二人揃って間の抜けた声を出してしまう。
 時間は放課後。場所は第三アリーナ。人物は鈴とセシリアだった。



「奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」



「奇遇ですわね。わたくしもまったく同じですわ」



 二人の間に見えない火花が散る。
 どうやらどちらも優勝を狙っているようだ。



「ちょうどいい機会だし、この前の実習のことも含めてどっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわね」



「あら、珍しく意見が一致しましたわ。どちらの方がより優雅であるか、この場ではっきりとさせましょうではありませんか」



 同時にメインウェポンを呼び出すと、それを構えて対峙した。



「では──」



 と、いきなり声を遮って超音速の砲弾が飛来する。



「「!?」」



 緊急回避のあと、鈴とセシリアは揃って砲弾が飛んできた方向を見る。
 そこには漆黒の機体が佇んでいた。
 機体名『シュヴァルツェア・レーゲン』、登録操縦者は──。



「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」



 セシリアの表情が苦く強ばる。



「……どういうつもり? いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない」



 とん、と連結した《双天牙月(そうてんがげつ)》を肩に預けながら、鈴は衝撃砲を準戦闘状態へとシフトさせる。



「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」



「何? やるの? わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいなんて大したマゾっぷりね。それともジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってんの?」



「あらあら鈴さん、こちらの方はどうも言語をお持ちでないようですから、あまりいじめるのはかわいそうですわよ? 犬だってまだワンと言いますのに」



 ボーデヴィッヒのすべてを見下すかのような目つきに並々ならぬ不快感を抱いた二人は、それでもどうにか怒りのはけ口を言葉に見いだそうとする。



「はっ……二人がかりで量産機に負ける程度の力量しか持たぬものが専用機持ちとはな。よほど人材不足と見える。数くらいしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はな」



 ぶちっ──! 何かが切れる音がする。



「ああ、ああ、わかった。わかったわよ。スクラップがお望みなわけね。──セシリア、どっちが先やるかジャンケンしよ」



「ええ、そうですわね。わたくしとしてはどちらでもいいのですが──」



「はっ! 二人がかりで来たらどうだ? 一足す一は所詮二にしかならん。下らん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」



 それは明らかな挑発だったが、堪忍袋の切れた二人にはどうだっていい。



「──今なんて言った? あたしの耳には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど?」



「場にいない人間の侮辱までするとは……。その軽口、二度と叩けぬようにここで叩いておきましょう」



 武器を握りしめる手にきつく力を込める。



「とっとと来い」



「「上等!」」






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