Infinite Stratos:Re
□第九夜
3ページ/10ページ
◇
再びチャイムがなり、ショートホームルームがはじまる。
「今日は通常授業の日だったな。IS学園生とはいえ、お前たちも扱いは高校生だ。赤点など取ってくれるなよ」
IS学園といっても一般教科の授業も当然履修する。
中間テストはないが、期末テストはある。ここで赤点をとると夏休みは見事に連日補修になるのだ。
「それと、来週から始まる校外特別実習期間だが、忘れ物などするなよ。三日間だが学園を離れることになる。自由時間では羽目を外しすぎないように」
七月頭な校外実習──すなわち臨海学校だ。
三日間のうち、初日は自由時間。もちろんそこは海なので、そこは咲き乱れる十代女子。先週からずっとテンションが高い。
水着は……去年修学旅行でハワイに行った時のでいいか。
「ではSHRを終わる。各人、今日もしっかり勉学に励めよ」
「あの、織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」
クラスのしっかり者こと鷹月静寐が質問したように、今日は山田先生がいない。
ちなみに彼女の名前は最近一夏に教えてもらった。
「山田先生は校外実習の現地視察に行っているので今日は不在だ。なので山田先生の仕事は私が今日一日代わりに担当する」
「ええっ、山ちゃん一足先に海に行ってるんですか!? いいな〜!」
「ずるい! 私にも一声かけてくれればいいのに!」
「あー、泳いでるのかなー。泳いでるんだろうなー」
……溺れてる姿が真っ先に思い浮かんだ俺は酷いのだろうか?
「あー、いちいち騒ぐな。鬱陶しい。山田先生は仕事で行っているんだ。遊びではない」
はーい、と揃った返事をする女子一同。相変わらずのチームワークだ。
◇
夜。
食事を終えた俺は、ベッドに仰向けに寝た状態で、教科書をパラパラと流し読みしていく。
「…………」
本来なら今年で三年なので、一年の内容はなんら問題はなさそうだ。
コンコン、と控えめに部屋の扉がノックされた。
俺は、バッと立ち上がり扉を開く。
「あ、涼夜」
「シャルロットか」
シャルロット。うん。なんか少し長いな。
「ごめんね、こんな時間に」
「こんな時間って……今どき小学生も寝てないと思うが」
現在の時間は十時を少し回ったところだった。
「そ、そうだね……」
なにやら歯切れの悪いシャルロットを、とりあえず中に案内する。
「あ、あのね、今日はちょっと……お願いがあって来たんだけど……」
「おゥ」
躊躇いがちだったが、意を決したように口を開く。
「そ、その……水着を買いに行くのに付き合ってほしいんだけど……」
「判った。いつだ?」
「え? その……え?」
俺が即答し過ぎたせいなのか混乱させてしまったようだ。
「だから付き合うって。……それでシャルはいつ行きたいんだ?」
「えと、日曜日なんかどうかな? ……ってシャル?」
涼夜の言葉に頬を赤らめながら、呼び方についての質問をする。
「あー、あだ名だあだ名。シャルロットは少し長いからな。……嫌だったか?」
他にも、シャロ、ロット、ロッティなどいくつかあるが。
「う、ううん。全然大丈夫! ──シャル……シャル、かぁ。ふふっ」
ただいま心の中のお花畑では三頭身のシャルロットが四人で手を繋いで踊っている。テロップで『しばらくお待ちください』と流れる勢いだ。
「それで、日曜日だな?」
「うん、約束だよ? 涼夜」
「判ってるよ」
その後は少し雑談をして、シャルロットは帰っていった。
◇