Infinite Stratos:Re

□第九夜
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「はあ、水着を買いにですか。でも二人で入るのは感心しませんよ。教育的にもダメです」



 ですよねー。



「す、すみません」


 ぺこりと頭を下げるシャル。



「ところで山田先生と織斑先生は何故ここに?」



「私達も水着を買いに来たんですよ。あ、それと今は職務中ではないですから、無理に先生って呼ばなくても大丈夫ですよ」



 ……山田先生はともかく、織斑先生はサマースーツで、とてもフランクには出来ない。



「──で、お前らは何してんの?」


 ギクッという音が訊こえた気がする。


「そ、そろそろ出てこようと思ってたのよ」



「え、ええ。タイミングを計っていたのですわ」



「やっぱバレてたか」



「いつから気づいていたのだ?」


 最初の鈴とセシリアはともかく、一夏と箒はバレている気がしていたのだ。


「少し前だ。四人も纏まって動いてれば視界にくらい入る」



 俺の言葉に気まずそうに顔を反らす鈴とセシリア。逆に一夏と箒は納得したような顔だ。



「さっさと買い物を済ませて退散するとしよう」



 ふう、とため息混じりにそう言った織斑先生。
 俺は織斑先生から一夏を見、ワイワイ騒いでるセシリア達を見る。
 すると山田先生と目があった。



「あ、あー。私ちょっと買い忘れがあったので行ってきます。えーと、場所がわからないので凰さんとオルコットさん、着いてきてください。それにデュノアさんも」


 どうやら同じことを考えていたようだ。


「折角だし、俺も少し回ってきます」


 しかし演技が下手だな、山田先生は。
 俺はこれでも演劇部の助っ人経験もあったので、演劇には自信があるのだ。
 有無を言わせず生徒三人を連れていく山田先生とは逆の方向に歩みを進める。
 別に買いたいものもない俺は、少しばかりアウトドア商品を見て回る。


「あ、碧海さん!」


「あん?」


 振り返ると先ほどの警備員が走ってくる。
 ……あまり名前を大きな声で言わないで欲しいのだが。



「……何か用ですか? さっきのことなら監視カメラなりを調べれば済むと思いますが」



「それはもう大丈夫です。先ほど警察の方が来て、調べましたから」


「……別にこのことをどうこうするつもりはありませんよ」



 別にこのデパートの管理体制をどうこう言うつもりはない。



「……えと、そうじゃなくてですね」


 やたらと言いにくそうな警備員さん。


「そ、の──さ、サインください!!」


「…………はい?」


 バッ、と何処からだしたのか、色紙とペンを差し出してくる。



「始めてテレビで見てからファンなんです!」



 頬を赤くし、キラキラした目で見てくる彼女が嘘をついているとは思えない。
 ……俺、サインとか書いたことないんだけど。



「だ、ダメですか……?」



「いや、いいけど……」


 サラサラと自分の名前を書いてあげる。
 涼夜はよく目立つ。
 それはオッドアイと言うこともあるし、見た目も悪くないからだ。
 女性はこう考える。
 『男は皆ISが使えない。けれど碧海涼夜と織斑一夏は使える。つまり彼らだけが自分達と対等』
 そんな考えの女達の間では二人の株価は上昇しているのである。
 尤も、彼女のように純粋に涼夜な容姿に心奪われた者もいるが。


「……はい」



「あ、ありがとうございます! これからも頑張ってください!!」


 警備員はそれだけ言うと、色紙を大事そうに抱えて、小走りで戻っていった。


「…………」


 もう暫くは変装しとこうと強く思った。
 いや、ファンだと言われて気分的には悪くない。
 悪くないが。
 あまり目立ちたくない。
 ファンとやらには悪いが。







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