Infinite Stratos:Re

□第十四夜
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 俺とナターシャの二人は、バスの停まる駐車場から少し離れた人通りの少ない所に来ていた。
 海から吹く潮風が二人の髪を揺らす。



「それで、話ってなにかしら? 黒いナイトさん」



「……嫌がらせか?」



 ナイトと呼ばれる権利などない。
 ナイト──騎士は守るための存在だ。
 俺は結局護れていない。



「ふふ、冗談よ」



 ……ったく、質の悪い。



「……あー、そうだ。昨日の今日でもう動いて平気なのか?」



「ええ、それは問題なく。──私は、あの子に守られてたから」


 ……。



「その“あの子”からの伝言だ。『私は誰も恨んでいない』『再び貴女と飛べる日が来るのを願っている』……だそうだ」



「!? それは!?」



 その言葉にどれだけの想いが込められていたのかは判らない。



「……確かに伝えたぞ」



 それだけ言うと背を向けて歩き出そうとする。



「……待って」



 俺の手を後ろからナターシャが掴んだ。
 ナターシャ自身なにを言えばいいかは解らなかった。ただ、半ば反射的に掴んでしまった。そんな雰囲気だ。



「……あいつは優しかった」



 振り返らずに言う。



「……ええ。あの子は私を守るために、望まぬ戦いに身を投じた……」



「そうだな。けどさ。──あいつ、最後は笑ってたぜ?」



 自分を責めるように口を開いたナターシャの顔が驚きに染まる。
 その様子が見なくても感じ取れた。



「笑って……?」



「あァ」



 悲しそうで寂しそうだったが、それでも笑顔だった。
 嬉しそうにお礼を言った少女を、俺は思い浮かべる。
 その直後、ナターシャに後ろから抱き着かれた。



「っ! なんのつも──!?」



 問いただそうとして……はやめた。
 何故なら、後ろに抱き着いてきた女性は震えていたから。
 声は漏れていない。それでも確かに濡れていたから。
 それが一瞬振り向いた視界に入ったから。



「あり、が、とう……」



 ナターシャは泣いていた。声も出さず、ただ静かに涙を流して。


「……」


 俺はただ黙って背中を貸す。
 かけるべき言葉を知らないから。
 それでも。
 それが少しでも誰かの悲しみを和らげることができるなら、それくらい構わない。
 そう思ったから。







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