Infinite Stratos:Re
□第十四夜
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バスに乗り込んで行った涼夜に手を振ったナターシャは、千冬に向き直る。
「おいおい、余計な火種を残してくれるなよ。ガキの相手は大変なんだ」
「嫉妬ですか?」
「……馬鹿を言うな。……それより、昨日の今日で動いて平気なのか?」
「ええ、それは問題なく」
いま返答までに少し間が空いたわね、と思いながらナターシャが答え、笑みを浮かべる。
「なんだ?」
「いえ……彼も貴女と同じ質問してきたと思って」
「……随分と気に入ったようだな」
「思っていたよりもずっと素敵ね、二人とも」
ナターシャは少しだけはにかんで見せる。
「……意外と平気そうだな」
ナターシャの様子に千冬が言う。この『平気そう』と言うのは肉体的ではなく精神的なものであろう。
「……そうですね。……それは彼のおかげです」
「そうか。まぁ、あまり無茶はするなよ。この後も、査問委員会があるんだろ? しばらくは大人しくしていたほうがいい」
「それは忠告ですか、ブリュンヒルデ」
IS世界大会『モンド・グロッソ』、その総合優勝者に授けられる最強の称号・ブリュンヒルデ。
千冬はその第一回受賞者であったが、正直その名前で呼ばれることは好きではなかった。
「アドバイスさ。ただのな」
「そうですか。黒いナイトさんにも色々言われましたし、おとなしくしていましょう。……しばらくは、ね」
一度だけ視線交わした二人は、それ以上語ることなく帰路に就いた。
◇