猫シリーズ

□どうしようもない日常
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「お邪魔しましたあ!シチューごちそうさま!」

「また誘ってくれ、伊達よ」

「Yes!!」

「もう来んな!」


時計の針が9時を回った頃に
やっと悪人と善人は
帰っていった。
不機嫌全開で後片付けする
主人を見て政宗様は
苦く笑ってみせながら
吾輩を抱き上げると
ソファーにごろんと転がる。

その政宗様の腹の上で
同じようにごろんとすると
小さく、本当に小さく
政宗様が呟き始めた。

「なあ、みたらし」

「にゃ」

「俺、今すっげえhappyだ」

「にゃ」

「小十郎がいて、お前がいて、まあ後はどうでもいいし死ねって思うけど、」

やっぱ幸せだ。
見上げた政宗様の顔は
今まで見たことのない
表情をしていた。
満たされているような、
そうでないような。

吾輩はなんだか苦しくて
もそりと起き上がると
政宗様の頬に手を当てて
肉球でぐいぐい押し付けた。
元気をだせ、と。
幸せだと言っているのに
政宗様が泣きそうで
哀しいのだと思った。

「くすぐってえ」

政宗様は笑った。
声を上げて笑った。
良かった、嬉しい。
もっと笑えばいいと
両手でぐいぐいしていると
上から影が刺して
吾輩と政宗様を暗くした。

「政宗様、」

ソファーでじゃれる吾輩達を
上から見下ろす主人は
怒っていた。
主人は笑顔だったが
確実に怒っていた。

「み"っ」

「ぐえっ」

吾輩は驚いて思わず
政宗様に猫パンチをかまし
腹から床へジャンプした。
その衝撃に変な呻き声を
出した政宗様。
それを睨み付ける主人。

「政宗様…?お風呂に入ってとっとと寝やがって下さい」

「な、なに怒ってんだよ小十郎。まさか猫相手にs」

「違いますっ!!」

今にもぶちギレ寸前で
真っ赤になり怒鳴る主人。
なんて分かりやすいのか。
政宗様は途端にニヤッと
いやらしい笑みを浮かべて
ソファーから立ち上がると
主人の腰に腕を絡めた。

「Ah〜?違うならなんで怒ってんだよ、小十郎〜?」

「別に政宗様がみたらしに肉球ふにふにされて羨ましいとか猫パンチされて羨ましいとか思ってません」

「そっちか!そっちなのか小十郎!」

「風呂沸かしてきます」

腰にまとわりつく手を外して
風呂場に消えた主人に
政宗様はがっくりと項垂れる。
しかしすぐにその口は
綺麗な弧を描き笑った。

「そういえば、今頃シテねえな。前はみたらしに邪魔されたしな………小十郎ぉ〜」

妙な猫なで声を上げながら
政宗様はスキップしながら
風呂場へ消えた。
暫くしてからなんやら
ガッチャゴッチャと
暴れる音が聞こえたが
それも治まり静かになった。

耳を澄ませれば
会話など容易く聞こえるが
なにをしているかなんて
今までの経験で察した。
きっとナニをしているのだな。

そして暫くしてから
風呂場から出てきたのは
予想通りぐったりした主人を
姫抱っこで抱える
満足そうな政宗様だった。
政宗様は寝室に主人を運ぶと
ドアからひょっこりと顔を
覗かせて「good night」と
吾輩に言いドアを閉めた。

また部屋の中から
喘ぎ声が聞こえた気がするが
吾輩は無視を決め込んで
ソファーの端に寝転んだ。
ごろにゃー。












どうしようもない
日常


(でも、愛すべき日常)














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