猫シリーズ

□もっと分かり合える
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「まぁつながぁあぁああ!?」

「松永の旦那ぁあぁああ!?」

「なんだ、悪人か」

「「悪人んんん!!??」」

「ははは、面白い少年だ」

主人と佐助が絶叫する中で
松永、は悪人呼ばわりした
吾輩を気にすることもなく
ニヤニヤと笑ってみせた。

「て、テメェ松永ァ!どっから入ってきやがった!」

「ちゃんと玄関から入ったよ。ノックをしたのだが返事が無かったのでね」

「全然気配なかったんですけど!?」

いつも通りどこからか
取り出したネギを構えて
主人は松永を威嚇したが
松永はそれには知らん顔で
ぐるんと吾輩の方に
顔を向けてきた。

「ところで、この少年を見るからに、私の実験は成功したようだね」

「実、験…?」

「素敵な腕輪だっただろう?みたらし」

「「「!!!」」」



お前かァアアァアア!!!!!



「死ねや松永あああ!!!」

「落ち着いて旦那!!!気持ちは分かるけど!!!」

「ははは、苛烈苛烈」

「………」

そして数秒後には松永に
今にも飛びかかりそうな主人と
それを必死に押さえる佐助と
無駄に満足げな笑顔で
吾輩を見つめる松永という
奇妙な図が出来上がった。

まあ、大体予想は
出来ていたが。

そんな3人を吾輩は眺めつつ
一番気になっていたことを
小さく呟いてみた。

「猫には、もう戻れないのだろうか………」

「戻れるとも」

ずいっと松永が寄ってきて
やけに楽しそうに言った。
「みたらしに近付くな!」と
主人がギャンギャン喚いたが
やはり松永は完全無視である。

「どうやって?」

「イメージすればいい」

「しめーじ」

「違う。イメージだ。猫に戻りたいと念じながら猫になった自分を思い浮かべれば良い」

「ふむ…やってみる」

視界の端にもう暴れていないが
心配そうな主人がいる。
佐助に関しては
「嘘くさーい」とでも
言いたげな顔である。
そんな彼らに小さく笑いかけて
吾輩は瞼を下ろした。

しめ………じゃなくて
いめーじ、イメージ。
猫に戻りたいと思いながら
猫だった頃の姿を
ぼんやりイメージする。

………あ、でも、
猫に戻ったら主人に
「かっこいい」とは
言われないかもしれない。
やはり吾輩だって男子だ。
可愛いよりもかっこいいの方が
嬉しかったりするのだが…

いや、だがしかし、
猫じゃないと主人の膝の上で
眠ったり出来ないかな。
それは嫌だな。

そんなこんなで、
もだもだと悩んでいると
ポンッと小さな音がして
戻ったか、と目を開くが
全く視界は変わっていない。
目の前では松永が
苦笑いを浮かべている。

「余計な事を考えたな?」

「?」

「猫耳だけ生えているぞ」

「ぬう…失敗か」

「なに。何回も繰り返せば慣れてくるだろう」

「いめーじは難しいな」

背中の方でユラユラと
なにかが揺れる気配がするが
尻尾まで生えてしまったか。
ふう、と溜め息を吐くと
なんだかさっきから妙に
荒い息がする事に気付いた。

その方向を見ると
やはり、というべきか。
主人が吾輩を見つめながら
興奮気味になっていた。
猫好きの主人は相変わらず
猫関係になると
箍が外れてしまうようである。

主人の目はピコピコと動く
吾輩の耳が気になるようだ。

「み、みた、らし…っあの…その…み、耳を……っ」

「………触ってもいいぞ」

それを合図に主人は
凄い勢いで横に来て
ふにふにと吾輩の猫耳を
幸せそうに堪能し始めた。

「かわいい…っ」

強面なはずの主人が
ふにゃりとした笑顔で
猫耳を触りながら呟く。

「「「(可愛いのはアンタだろ………)」」」

主人以外全員の意見が合った
記念すべき瞬間であった。



同時に、この日から
吾輩は猫にも人間にも
なれるようになった。
悪人には一応感謝しておこう。















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(かわいいなぁ…)
(((かわいいなぁ…)))

















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