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□救いようのない話
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「…なあ、佐助」

そんな時だった。
くい、と腕がひっぱられた。
見れば小十郎さんが
俺様のシャツを指先で
遠慮気味に掴んでいた。

「ん、なに?」

「あの…な?」

不安そうに俺様の顔を
覗き込んでくる小十郎さんに
内心もう心臓ばくばく。
うわ、目うるうるしてる。
可愛いなホントに。

「佐助…あの…」

「なあに?小十郎さん…」

小十郎さんは顔を少し
赤くしながらチラチラと
視線を泳がせ、
なぜかオロオロしていた。
なんだなんだ。
俺様がイケメンすぎて
直視できないっての?



「チャック…開いてる」

「………え」

「だから!チャックが開いてんだよっっっ!」



小十郎さんはよっぽど
恥ずかしかったのか
食堂に響くぐらいの大声で
そう叫んでしまった。
勿論、食堂はその絶叫に
静まり返ることになった。

今度こそ伊達の旦那の
大爆笑の笑い声は
食堂に響き渡った。
………あんの眼帯ぃいい…
分かっててこんな事を…!



そして。



あまりの恥ずかしさに
ヤケクソになっていた俺は
隣で真っ赤になっている
小十郎さんに叫んだ。

「せっかくだからヤりませんか!」

その後は言わなくても
分かるってもんだ。

小十郎さんだけでなく
真田の旦那からも
蹴られて殴られて
伊達の旦那は笑いすぎて
椅子から転げ落ちた。
俺様は保健室送りになった。
小十郎さんはしばらく
口をきいてくれなくなった。



ただそれだけのこと。



………俺と小十郎さんが
恋人らしくできるのは
いつなんだろうか。















救いようのない話

(今では良い思い出です)

















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