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□恋泡バスタイム
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「…よし、終わった」

パソコンとずっと
睨み合っていた目を押さえつつ
仕事が終わったことに
ホッと安堵した。
パソコンの電源を切り
すっかり冷めてしまった
コーヒーを全て飲み干す。

時計の針はもう
真夜中を指していた。

その事実にげんなりしながら
自前に沸かしておいた
風呂を思い出した。
そういえば会社で猿飛から
泡風呂のやつを貰って
それを試そうとしたんだった。

机に置いてあった
泡風呂になるらしい
液体の入った瓶を片手に
風呂場へと向かう。

「確か、3滴だったか」

ぽたり、ぽたり、ぽたりと
暖かな湯の中にそれを垂らす。
そして手でかき混ぜると
あっという間に泡がたち
もこもこした真っ白い泡に
表面が包まれた。

それを確認して入ろうと
シャツのボタンに手をかけたが
同時にインターホンが
ぴんぽーんと音を慣らした。
もう真夜中の2時だというのに
客が来るなんておかしい。
まさか不審者か。

「Hey小十郎〜!起きてんだろお〜」

出ようか迷っていると
聞き覚えのありすぎる声が
ドアの向こうからした。
溜め息が込み上げるのを
感じながらハイハイと
ドアを開きに行った。

ドアを開けばやはり
そこには制服姿の政宗様が
満面の笑顔で立っていた。

「…どうなさいました」

「風呂貸してくれよ。壊れちまったんだ」

「銭湯に行けばいいじゃないですか…」

「こんな真夜中に開いてねーだろ」

政宗様はそう言うと
俺の横をすり抜けて
風呂場へと直行した。
仕方なくドアを閉めて
その後を追えばもうすでに
政宗様は服を脱ぎ出していた。

「oh、泡風呂とはセレブじゃねえか小十郎」

「はあ…猿飛に貰いまして」

「猿に?変なもん入ってねえだろうな」

「まだ確かめておりませんので」

「なんだ、小十郎も今から風呂か。なら一緒に入ろうぜ」

「えー…」

「露骨に嫌そうだな」

だって政宗様と風呂に入ると
ろくなことがない。
体を洗うふりをしながら
わざと愛撫をしてきたり
シャワープレイだとか言って
シャワーを突っ込まれたり
リンスで中を解かされたり
(次の日腹が痛くなった)
とにかくろくなことがない。

そんな俺の心情を察したのか
政宗様は慌てて笑った。

「なんもしねぇよ!大丈夫大丈夫!…………多分」

「…多分?」

「い、いや大丈夫。約束する。誓う」

「はあ…それなら、」

「よっしゃあ!」

どこまでも怪しいが
嬉しそうに笑う政宗様に
悪い気はしない。

政宗様は俺が脱いでいる間に
風呂場に入っていって
さっさと体を流すと
泡風呂へと体を沈ませた。

俺もそれに続いて
体を流すと真っ白な泡の中へ
足を突っ込んだ。
しかし、そこでふと停止。

「どうした?小十郎」

「いや…二人入るには少し狭いかと」

「かまわねえよ。ここに座れ」

命令口調で言われたそれは
政宗様の足と足の間。
少し迷ったが政宗様は
なにもしないと言っていた。
それを信じよう。

そう自分に言い聞かせて
大人しく政宗様に背中を
預ける状態にして
足の間に腰を下ろした。

くす、と政宗様が小さく
笑った気がした。
その吐息が思ったよりも
近くに感じて肩が跳ねる。

「っ政宗様!」

「Ah?まだ俺はなんにもしてないぜ?」

「う……っ」

それはそうだけれど。
もだもだとしていると
首元にぬるついたなにかが
這ったような気がした。

「ひっ…」

慌てて振り返ると
予想通りに政宗様が
俺の首を舌で舐めていた。

「って…!なにしてるんですかっ!」

「お前の首筋舐めてんの」

「見れば分かります!」

「なら聞くなよ」

「ああもうっ…」

とにかく逃げなければと
腰を浮かそうとしたが
素早く腰に腕が絡んできて
ぐい、と引き戻された。

「あっ…」

その途端、自分の背中に
押し付けられた固く熱い
塊に体が強張った。

「ままま政宗様っ!いい加減にしてください!」

「なにをだ?」

「…っ政宗様、のが…背中に、当たってますっ…!」

「Ah…当ててんだよ」

「なっ…」

すりすりと肌にそれが
触れる度にびくびくと
腰が震えてしまって
カッと顔が赤くなる。
そんな反応を楽しんでいるのか
くすくすと政宗様は笑いながら
俺を揺さぶるようにして
腰にそれを押し付けてくる。

「や、も…、なにもしないって言った、のに」

「悪い悪い。その代わりにとびきり善くしてやるよ…」

「う…っ、(やっぱり信じるんじゃなかった…!)」

結局次の日、腹痛で
転げ回る俺がいた。












恋泡バスタイム

(あ、右目の旦那〜!
泡風呂どうだった?)
(死ね猿飛)
(なんでっ!?)
















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