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□救いようのない話
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「おおお俺様とっ!付き合ってくださいいいいいい!」

夕暮れ。
放課後。
呼び出し。
屋上。
そして、告白。

気のきいた告白の言葉も
真っ白な頭の中では
なにも浮かばなかった。
ベタとしか言い様のない
このシチュエーション。
(ちなみに慶次が計画)

しかも土下座の告白だ。
必死すぎる。
情けないにも程がある。
今の俺様、超、涙目。

流れる沈黙にガタガタと
体が震えるのを感じながら
目の前で腕組みをして
更に仁王立ちしている
愛しい彼女の返事を待つ。

そして。





「分かった」

「ですよねー!………をっ?」





予想外の返答に思わず
変な声が出たが
そんなことはどうでもいい。
俺様は慌てて体を起こして
片倉小十郎を見上げた。

「何度も言わせんな」

相変わらず可愛くない
言葉遣いだったが
小さく俯く小十郎さんの顔は
夕日のせいでもなく、
確かに赤くなっていた。



―――――――――………



そんな奇跡の日から3日後。

「ありえねえ。妄想だろ」

「ちょ、伊達の旦那しつこい!いい加減認めてよ!」

「ありえないでござる。佐助は夢でも見たのでござろう」

「旦那までっ!」

昼休み。
食堂にていつものメンバーで
昼食をむさぼる。
そして今あの日のことを
伊達と真田の旦那に
打ち明けた。が。

「あの俺にしか心を許さない小十郎が?お前と?Ha!寝言は寝て言いな」

「そうだぞ佐助!まだねぼけておるのか!破廉恥!」

「いや、ねぼけるのは破廉恥じゃないと思うよ旦那」

「マジでござるか」

「うん。…じゃなくてっ!ホントなんだってば!俺と小十郎さんは付き合ってんの!これ、マジ!」

ジェスチャー付きで
熱弁しているにも関わらず
この二人組は可哀想な
目で俺様を見てくる。
…いや、もうなんか生ぬるい!
冷たいのに同情のような…
なんていうか生ぬるいぞ!

「証拠はあんのかよ?」

「俺様と小十郎さんの存在がもう既に証拠じゃない?俺様達生まれた時から結ばれる運命だったんだから!」

「そういえば小十郎どこ行ったんだ?」

「あ、確か日直だから少し遅れると。もうすぐ来ると思いまする」

「ねえ、無視?スルー?聞いたのそっちじゃない?ねえちょっと」

全く信じようとしない二人に
俺様は仕方なく諦めて
ラーメンをずるると啜った。

「あ、片倉殿」

そんな時、食堂のドアが
見える位置に座っていた
真田の旦那が呟いた。
慌てて振り返れば小十郎さんが
パンと牛乳パックを片手に
こちらに向かってきていた。

ああ、今日も可愛い…
スラリとしていてそれでも
ちゃんとムチリとした
太股がスカートから覗く。
後ろでくるんと巻いた髪が
小十郎さんが歩く度に
可愛く揺れている。
あ、勿論あの爆乳もね!

ああもう無意識に息が
荒くなっちゃうよ!

ハアハアしていると向かい側に
座っていた伊達の旦那と
真田の旦那が立ち上がる。

「つーわけだから。俺と幸村はちょっと遠くからお前ら観察しとくわ」

「うえっ!?」

「付き合ってるんならイチャイチャできんだろ?『証拠』、見せろよな?」

「ちょっ」

「頑張れよ佐助破廉恥!」

「応援するのか貶すのかハッキリして旦那!」

二人は慌てている俺様に
ニヤニヤしながら遠くの席へと
移動してしまった。

「佐助、」

そんなことしていたから
小十郎さんはいつの間にか
もう目の前に立っていた。

「あ………や、やっほ」

かなりぎこちなく笑い
手をヒラヒラさせると
小十郎さんは首をコテンと
横に傾げてみせた。
なにその仕草。
なにこの天使。

緊張と興奮と恥ずかしさに
顔が赤くなるのを感じる。
それをごまかすために
思い切りもう冷えた
ラーメンにがっついた。

それを見て小十郎さんは
不思議そうにしながらも
いつものように俺様の
隣の椅子に腰かけて
いつもと同じクリームパンを
もふもふと食べ始める。

「…小十郎さん、いっつもそれで飽きない?」

「飽きない」

「そか」

「うん」

「うん」

「………(もふもふ)」

「………(ずるずる)」

「…政宗様と真田は?」

「あー、なんか、今日は別々で食べるんだって」

「そうか」

「うん」

「うん」

「「……………」」



き、きまずいっ!!



この空気に耐えられず
思わずチラリと旦那達を見れば
真田の旦那はオムライスに
夢中になってるし、
伊達の旦那は腹を抱えて
俺様を指差しながら
ゲラゲラと笑っていた。

…食堂が騒がしくて良かった。


 
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