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□筆頭だって楽じゃない
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「ふぎゃーーーーー!」

奥州の朝はいつも
波乱万丈である。



「小十郎っ!どうした!?」

伊達レパシーよろしく、
真っ先に飛んできた政宗が
朝から絶叫をあげる小十郎の
部屋の障子を迷わずに開ける。

「あっ…」

「うおおおおおおっ!?」

そして、飛び込んできた
衝撃的なその光景に
政宗もまた悲鳴をあげた。
少しだけ歓喜を孕んだ悲鳴を。

布団を手探り寄せるようにして
オドオドとする小十郎の頭には
ぴこぴこと白く長いものが
伸びていたのだ。
そう、兎耳である。

政宗は歓喜に震えながら
「ウサミミきたああああ!
このサイトにもやっと
政(兎)小がきたああああ!」
と心の中で叫んだ。

そんなことも知らずに
小十郎は自分に降りかかった
災難を理解すると、
ぶわりと涙を滲ませた。

「政宗様ぁああ…!小十郎の、頭に!ウサミミが!ウサミミがああああああ!」

あまりにショックならしく
小十郎はびーびーと
泣き出してしまった。
同時にウサミミもへにゃりと
元気を無くして折り畳まれて
その小十郎の様子に
政宗は心臓バクバクである。

「おまっ、泣くな!ウサミミ生やしてペタンコ座りで泣くな!ちょ、ちょっと待ってろ!トイレ行ってくるから!部屋から出るなよ!すぐ戻るからな!」

政宗は珍しく理性を繋いだ。
だがしかし朝の関係で
コントロールも出来ず
前屈みで部屋から出ていった。

小十郎はその後ろ姿を見送り
ボロボロ泣きながらも
どうしようどうしよう、と
考えを巡らせた。

一体何故こんなことに?
昨日自分はなにかを
したであろうか?
なにかされただろうか?
考えてみても心当たりはない。

「くそっ…」

唇を噛み締めながら
屈辱に耐えていると、
廊下からドタバタと数人が
こちらに走ってくる足音がして
慌てて布団を被ろうとするも
間に合わず滑りの良い障子が
スパーンと開かれた。

「よーぅ!小十郎!」

「片倉さんおっはよ!」

ああ、どうしてこんな時に…
お互いを押し合うようにして
やってきた男二人に
小十郎は目眩を覚えた。

二人は苦い顔をする小十郎の
頭にぴょこんと生えた兎耳を
キョトンとした目で見ると
次には驚くどころか
満面の笑みで叫んだ。

「うわー片倉さんかわいー!すげえ似合ってるよ!」

「おいおい可愛いじゃねえかぁ!萌え殺す気か?あん?」

「ちょっ、」

二人はお構いなしに部屋に
ドスドスと上がり込むと
布団を抱き締めるようにして
震えている兎耳小十郎を
デレデレしながら撫で回した。

「すげー、耳ふわふわ!本物なんだ〜」

「ひっ、やめ、触んなっ」

「お?尻尾まであるじゃねえか!」

「うあっ!?脱がしてんじゃねえっ!離れろっ」

しかし大男二人の力には
流石の小十郎も敵わず
着々と服を脱がされてしまう。
ついには褌一枚にひん剥かれ
二人の子供のような
キラキラとした目を向けられ
小十郎はこれが夢である事を
一心に祈るばかりだ。

「おいテメェらいい加減にっ…」

「やっぱあの松永のオッサンが言ってた通りだな!」

「だから言ったじゃん!来て良かっただろ?」

「…!松…永?それは一体どういう、」

「うおおおお片倉殿おおおおおおおおおおおおおお!」

松永という名前に
嫌な予感を感じながらも
問い詰めようとした瞬間、
またしても聞き覚えのある
叫び声と共にドドドドドと
廊下を走る音が聞こえて
小十郎は頭が痛くなった。

その足音は怖いぐらいに速く
あっという間に部屋に着くと
派手に障子を張り倒し、
真田幸村は参上した。

「片倉殿おおお!………おおおおおお!」

そして褌一枚の姿で
ウサミミが生えた小十郎を前に
案の定絶叫しながら
鼻血を吹き散らした。
しかしその見開かれた目は
ガッツリ小十郎を見ている。
ガン見である。

「…って、なにしに来たんだテメェはあああ!俺の部屋を荒らしに来たのかあああ!」

「違うよ小十郎さん。ウサミミ生えてるアンタを見に来たの。あ、勿論俺様もね」

「猿飛っ!?」

更には天井からスルスルと
猿飛佐助が降りてきた。
小十郎はただでさえ
ウサミミで混乱しているのに
この騒ぎにもう思考が真っ白で
口をぱくぱくさせるしかない。

「へー?可愛いじゃん小十郎さーん」

襲 っ ち ゃ い た い 。

佐助はニヤニヤしながら
白く長い耳を指先で撫で、
固まる小十郎の耳に口を近付け
吐息混じりに言った。
これにはもう流石の小十郎も
色々と耐えきれなかった。

「退けえぇえええ!!」

「わっ」「おっと」

自分に群がる男共をなぎ払い
何度も転びつつも
部屋の出口へと走った。
そう、えらくトイレの長い
我が主君のもとへ。
あの方に助けを求めるなんて
久しぶりだ。
しかし小十郎が扉を開く前に
スパーンとそれは現れた。


 
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