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□言葉はいらない
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夢を見た。
小十郎が俺から
離れていく夢。

悲しい顔もせず
嬉しい顔もせず
ただ冷たい眼差しで
お前は無表情で。
小十郎にそんな風に
見られた事なんて
一度もなくて。
…怖かった。

「小十郎!」

違う…こんなのは
お前じゃない。
思わず名前を叫ぶと
それが合図のように
ゆっくりと小十郎が
俺から目を逸らして、
遠ざかっていく。

慌てて走ろうとしたが
足がなにかに
掴まれたように
全く動かない。
それでも精一杯に
腕を伸ばした。
手が虚しく空を掴む。

怖くて苦しくて
何度も何度も
小十郎を呼んだ。

ああ、やめろ
やめてくれ
お前まで俺を
見捨てるのか
お前がいなくなったら
俺はどうすればいい
俺の右目になって
くれたんじゃないのか
なあ、小十郎
行かないでくれ
傍にいてくれ
お願いだ小十郎
一人にしないでくれ…!



「政宗様!」



ハッと目を開いた。
目の前には見慣れた
天井と心配そうに
俺を覗き込む小十郎。
外はまだ暗闇で
真夜中なのだと分かる。

俺は体を起こして
夢だった事を
やっと理解した。
背中にはびっしょりと
汗をかいていて
少し喉が痛い。

「政宗様…随分うなされていましたが、」

横に座る小十郎の声が
酷く優しくて、
眼差しが暖かくて。
涙腺が緩むのを感じて
慌てて目を伏せた。

「sorry。面倒かけちまったな。下がっていいぜ」

「…政宗様。小十郎は此処に居ります」

「…!」

小十郎の言葉に驚いて
思わず顔を合わせれば
やんわり抱き締められて
もうなにもかも
ボロボロだった。
溢れる涙と嗚咽が
小十郎の服に消える。
悔しいが完敗だ。
流石俺の右目。

「小十郎…っ小十郎!」

「はい、政宗様。小十郎は此処に…」

まだ弱い俺を
許してくれ小十郎。
でも、いつか必ず。

「I love you、小十郎」

嗚咽混じりに告げた
その言葉に小十郎は
微笑み、頷いた。













言葉はいらない

(HEY小十郎!昨日の告白覚えてるか?お前頷いたよな?)(申し訳ありません、意味が解りません)











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